コンビニにあったのはおつまみ用の個包装のクリームチーズだけだった。
1箱じゃ足りないので4箱買った。
コンビニを後にして、帰り道にオレは疑問に思ってた事を聞いた。

「でも…なんで急にうちに来たの?」
「え…イヤー…」
「……あー、康太と喧嘩したんだろ」
「…喧嘩っていうかまあ…うん」
「慶吾は昔からそうだったからな。
彼氏と喧嘩したらメールとか、電話とか、うちに来て愚痴ってw」
「そうだっけ?」
「そうだよ。で、何があったの?」
「オレは2人でSex and the Cityを見たかったから
わざわざDVD借りてきたのに、
康太がそんなの見るよりゲームしようって言うから…」
「……は?」
「楽しみにしてたのにそんなの呼ばわりはないと思わない!?」
「お前ら…長続きするわw」

家に着いた。台所でクリームチーズを取り出しながら言った。

「で、どうするの?」
「え?」
「仲直りしたいんでしょ?」
「…うん」
「まあそうだろね。だからうちに来たんだもんねえw」

そう言いながらカバンからケータイを出す。

「あっ!」
「どうしたの?」
「メール来てた。泰三さんかな…」

マナーモードにしてたから気付かなかったみたいだ。
ドキドキしながらメールを開く。

「……メルマガかよ!」
「まあ…気長に待とうよ」
「そうだね…」

とりあえず康太をうちに呼ぶことにした。
もう二人を許して随分経つけど二人一緒に会うのは何気に初めてだった。
10分後、康太がやってきた。

「よう…」
「いらっしゃいませ」
「慶吾いるのか…?」
「もちろん」
「…帰る」
「ハイ上がって!」
「ちょ!ちょちょちょ!!」

オレは康太の手を引いて無理矢理引きずっていった。

「とりあえずオレはティラミス作りで忙しいから
二人で勝手に話し合ってて」
「え…」
「ユキヒロー…」
「甘えない!」

生クリームを泡立てる。
しっかりと泡立ったら卵黄と砂糖を混ぜ合わせながらお湯を沸かす。
お湯が沸いたらコーヒーを溶かし、カルーアと混ぜてシロップを作る。
卵黄にクリームチーズを混ぜてホイップクリームを混ぜる。
あとはスポンジの代わりのビスケットにシロップを塗ってクリームと重ねるだけ。
あっという間に出来たけど…話し合いは進んでるのか…。

(まあ…期待は出来ないだろうな…)

リビングのドアを開くとやはり二人は黙ったままだった。
どう見ても仲直りしたようには見えない。

「仲直りした?」
「……」
「ねえ、二人に聞くけど、自分のせいで相手が死んだらどう思う?」
「そんな極端な話…」
「どう思うって聞いてるの」
「そりゃあ…イヤだよ…悲しいし」
「オレも…」
「そうだよね。たとえば恋人じゃなくて友達だったり、他人でも嫌だよね。
今日ね、オレはね…そういう状況になったんだ」
「え!?」
「ユキヒロ…」
「泰三さんも昔そういう思いを経験してる。
だから今日、命をかけてオレを守ってくれた」
「一体何が…」
「詳しい話は、泰三さんが帰ってきてから話すよ。
今オレが言えるのはこれだけ。あとはお前ら次第」
「……」
「………ゴメンな」
「康太…オレの方こそ…ゴメン」
「…よろしいw 生きてりゃなんだって出来るんだから
喧嘩なんてバカらしいでしょ?
さて、オレは最後の仕上げやるから、
合体しなけりゃ乳繰り合ってていいよw」
「……ムリw」
「さすがにここじゃなあw」
「バーカ、本気にすんなよw」

キッチンに戻って仕上げをする。
ビスケットをシロップに潜らせてガラスの皿に敷く。
その上にクリームを重ね、またビスケットを敷く。
皿にクリームを載せて、最後にココアを振ってミントの葉を飾る。
小さいグラス3つにも同じように小さなティラミスを作った。

「ハイ。お前らの分」
「え、いいの?泰三さんより先に食べて」
「なんか悪いな…喧嘩の仲裁してもらって、お菓子まで」
「いいよ、オレも一人で心細くてどうかなりそうだったから。
それに生きてりゃなんとでもなるって自分自身でも気付けたから。
オレも泰三さんを困らせないように、しっかりしなきゃね」
「お前、強くなったな…」
「泰三さんのおかげだよ…全部」

泰三さんがいなければオレは…
いまだに康太との事を引きずってただろう。
早く帰ってきて欲しい…泰三さん…。