「ふざけんなよ…!クソが!!」

黒澤の顔面めがけて拳を打ち込んだ瞬間
視界から黒澤の姿が消えた

(下か!)

下を見る。次の瞬間にはナイフが目の前にあった。
右腕で反射的に払いのけ、続けざまに肘打ちを食らわせる。

ガッ!

またかわされた。
当たりはしたがダメージにはなってないだろう。
右の頬がズキズキと痛む。
頬を温かい血が流れていくのが分かった。
血が顎から鎖骨にポタポタと垂れる。
ナイフをかわしきれなかったらしい。

(クソ…丸腰だと分が悪いな…)

間合いを一旦開く。
ユキヒロはさっきから動けなくなっているようだ。

(黒澤の野郎…!ユキヒロを守るためやったらオレは…)

もう一度ユキヒロの位置を確認しようと
一瞬後ろに気をやった隙に黒澤が襲い掛かってきた。

「あっ!」

気づいた時には黒澤はもう既に目の前にいた。
喉を狙ってナイフで突いて来た。
すぐ後ろにはユキヒロがいる!
よけるわけには…!!

ガシッ!!

咄嗟に黒澤の右手を掴んだ。
喉ギリギリのところでナイフが止まる。
クソ…力じゃ負けないつもりだが…互角か…それ以上だ。

「いひひいいいぃ。あの時の事、思い出すなぁあぁああぁw
興奮してきちまったぜえぇw」
「変態野郎…地獄に堕ちやがれ…!」
「うひひ。男同士でサカり合ってるお前らも、変態じゃねぇかよおぉwww」

その言葉にオレの中で何かがキレた。

「お前みたいなキチガイと一緒にする…なぁあああ!」

怒りにまかせ右手に渾身の力を込めて黒澤の手首をひねり上げた。


ボキ…ッ、ゴキッ!


黒澤の手首がありえない方向に曲がった。

「ぁあああああははあはああぁぁ!!んぎも゙…ぢ、い゙ぃいwwwwww」
「くたばれ!」

完全に目がイッている。
続けざまにボディブローを入れる。
黒澤の手からナイフが落ちた…
騒ぎを聞いた誰かが通報したのか、
パトカーのサイレンの音が近づいてきた。

(よし…これで警察が来れば…)

しかし次の瞬間、
黒澤は左手で落ちていくナイフをキャッチし、
オレに向かって突き出してきた。

「……っ!!」

オレは咄嗟に右手でナイフを掴んだ。
しかし目測を誤り、刃の部分を掴んでしまった。
焼けるような痛みが右の掌に走る。

(ぐっ…!!)

このままだと形勢逆転もありうる。
左足ですばやく黒澤の右手を蹴り上げる。
関節がイカれているからダメージはでかいはずだ。
予想通り黒澤は呻き、ナイフを握っている手から一瞬力が抜けた。

(今や!!)

ナイフを持った手を払いのけ、喉を押しながら足払いをした。
黒澤は派手な音を立てて地面に倒れた。
パトカーのサイレンがすぐ後ろまで来て止まった。

「ヒヒヒ……気持ち…いいぃ……」
「ハア…ハア…」
「君達!何やってるんだ!!やめなさい!」

黒澤は起き上がる気配を見せない。
警官の駆け寄ってくる足跡が近づいてくる。
頬と掌はまだじんじんと痛む。
黒澤の背中の辺りから黒い水のようなものが湧き出してきた。

(……血?)

ニヤニヤしながらこちらを見つめる黒澤から、オレは視線を外せなかった。