泰三さんにせかされて服を着替えた。
右手が痛むから着るのが難しくて手間取ってたら
泰三さんが手伝ってくれた。

「よいしょ…ありがと」
「いつも思うけど、ユキヒロはおしゃれやんな」
「そう?うちのショップの型落ちだから
ホントにおしゃれな人から見たら1年遅れてるよ」
「そうなんやー。
…オレみたいなジャージと一緒で恥ずかしくないか?」
「自慢の彼氏と一緒で恥ずかしいとでも?」
「イヤ…オレもちょっとくらいは、服装に気を使おうかと…」
「うーん…このままでもいいけどなぁ…
じゃああとでうちのショップ行ってみようか?」
「おう」

そして玄関まで来た。
ゆうべの事が蘇った。ノブに触るのが少し怖い。
躊躇してるのがばれたらしく泰三さんが

「ホレ」

と後ろから手を伸ばしてドアを開けてくれた。
せっかく泰三さんが明るく振舞ってくれてるんだから
オレもずっと沈んだままじゃいられないよな。
振り返って閉まりかけたドアをかかとで押さえて泰三さんを見上げた。

「ありがと」

そう言ってキスした。
泰三さんはきょとんとしていたが、ニコッと笑って抱きしめてくれた。

食事は例の定食屋さんに行った。
暑いし精をつけなきゃねと言う事でうな丼を二人で食べた。
そのあとショップに行ってみた。

「あれー名取君、珍しいじゃない休日に」
「どうもーお疲れ様です」
「え?その右手どうしたの?」
「ああ、ちょっと火傷しちゃってw
今日は彼に合う服があるかなと思って来てみたんですけど」
「ど、どうも…」

泰三さんは初めてこういう店に来るみたいで
完全に挙動不審になっていた。

「わー、背、高いんですね!体格もいいしー!ちょっと名取君いい?」
「ハイ、ちょっと待っててね」
「お、おう…」

そう言うと蜜子*さんはオレの手を引っ張ってバックヤードにきた。

「ちょっと!超イケメンじゃないの!友達?」
「え、えーと…まあ友達というかなんというか…」
「イヤーン、超タイプなんですけど!あの逞しい腕に抱かれたいわー。
それにあのタンクトップの張り詰めた胸!逆三角形の体!
超ヤバいんですけど!どうしよう名取君アタシ化粧崩れてない!?」
「ちょ、蜜子さん、ダメですよ…」
「なんでよ!」
「彼、恋人いるんで…」
「そんなの奪っちゃうわよ!もうアタシもギリギリなのよ!必死なのよ!」
「勘弁してくださいよ、オレの身にもなってくださいよ」
「……チッ」
「チッって…。とりあえず型落ちのでいいから、
安くて彼に合いそうなやついくつか出してもらえませんか?」
「知らないわよもー自分で出せばー?」
「はいはい…」

泰三さんが脈なしと知ってすっかりすねてしまった。
カミングアウトしてないのでハッキリと言えないのがもどかしかったが
何とか諦めてもらえたようで一安心した。

***

「お、おかしくないか…?」
「まあジャージ姿見慣れてるからねえw
やっぱりラフなカッコの方がよさそうだね。
じゃあ…これかな」
「よいしょ…っと。ちょっと派手やないか…?(;´ω`)」
「うーん…やっぱり30代が着る感じじゃないかー。
じゃあこっちのシンプルなやつならどうかな」
「……んー、これはまあまあ、かなあ…どうやろ?」
「いいんじゃない?これなら結構似合ってるよ」

「名取君、まだー?」
蜜子さんの声がカーテンの向こうから聞こえた。

「あ、もう決めたんで、着替え終わったらすぐ出ますー」

元のユニクロのタンクトップに着替えて
泰三さんはようやくほっとしたようだった。
カーテンを開けて外に出る。

「で、どれにするの?」
「えっとこれとこれとこれ…あとこのタンクトップの色違いありましたよね」
「在庫あったかなー」
「ネイビーが確かあったと思うんで、あったらそれを」
「かしこまり〜。ちょっと取って来るわー」

蜜子さんはそう言ってバックヤードに消えていった。

「オイ…オレこんなとこで買ったことないから分からんけど
結構高いんやろ?いくらくらいなんや?」
「あー大丈夫、うち社員割引充実してるから、
あの組み合わせなら1万5000円以内で収まるよ」
「それでも1万5000円か…ユニクロとはえらい違いやな…(;´ω`)」
「お待たせ~。じゃあえーと…合計で1万3500円ね」
「あ、ちょっと…」
「どうしたの?」

オレはレジの横のガラスケースをチラッと見た。

「イヤ、なんでもないです」
「ほな…これでお願いします」
「ありがとうございます〜。1500円のお釣りです」

蜜子さんは服をてきぱきと紙袋に詰めていく。
それを泰三さんに渡した。
オレは店を出たところで泰三さんに耳打ちした。

「ちょっとだけ仕事のことで話があるから
下の本屋で暇潰しててもらっていい?」
「分かった。ほな料理本のコーナーに居るからな」
「うん、ゴメンね」

そういってレジの方に戻っていった。

「何?忘れ物?」
「イヤ、財布欲しかったの忘れてて…」
「フーン、なんで彼を行かせるのよ。
せめて目の保養くらいしたかったのに」
「イ、イヤー…ま、待たせちゃ悪いなと思って、本屋に。
本屋なら暇つぶしできるでしょ?
それにこういう店慣れてなくて緊張してたみたいだから」
「フーン…まあいいわ。で、どれにするの?」
「えっと…これ」
「はいよ」

そう言って蜜子さんはガラスケースから財布を出し、ラッピングし始めた。

「じゃあ1万円ね」
「え、社員割引で2万2000円じゃないんですか?
それにラッピング頼んでないんですけど…」
「『カレ』にあげるんでしょ」
「え?」
「好きなんでしょ?彼の事」
「は?な、なん…そんな、いやあの、ち…えーと…」
「女のカンなめんなよw」
「……御見逸れしました。…つーか、キモいとか…思ってます?」
「は?なんで?」
「イヤ…オレが、その…ゲ、ゲイだから…」
「なーに言ってんのよ、名取君は名取君でしょ!バカねー」
「…は、ハイ…」
「まあ…超タイプだったから残念だけど、
名取君の彼氏なら取る訳には行かないもんねw
お幸せにね」

そう言って蜜子さんは紙袋を渡してくれた。

「ありがとうございます」
「ハイじゃあちょうど1万円ね。まいどあり〜
ところでさ…」
「なんですか?」
「カレのヌード写メ送ってくんね?(*゚∀゚)」
「ダメです!」
「ハハハw 冗談だよwww」
「もう…それじゃ、お疲れ様です」
「はーい、おつかれさま」

オレは紙袋を持ってショップを後にした。
窓の外は夕焼けで空が綺麗なオレンジ色に染まっていた。

(泰三さん…喜んでくれるかな…)

(´・ω・`)★☆(´・ω・`)★☆かいせつ★☆(´・ω・`)★☆(´・ω・`)

*1 蜜子:ボケてで以前出していたシリーズお題「おきゃんの日記☆Max Heart」に出て来たリアル女子。当然ながら架空の人物。