シリコンのキーカバーが絶縁してるが
鍵が熱くなってきたようできな臭い臭いがしてきた。
オレは我に返って鍵をノブから離した。

「だ、大丈夫か!とにかくこれをどうにかせな…」

オレはドアを注意深く観察した。
マンションにありがちな表面が金属製のドアだ
中も金属かは知らないが、ノブや鍵穴も金属で出来ている。
鍵を開ける時に感電しなかったのはおそらく
ユキヒロが自宅の鍵にシリコン性のキーカバーをつけていたためで
たぶんこのドア全てが帯電してると考えた方がいいだろう。
という事は一見分からないところから電流を流す事も可能という事か。

少し背伸びをしてドアの上部分を覗く…何もない。
ドアの下もじっくりと見てみるが何もない。
ノブが付いている方にも、蝶番が付いている方にも
仕掛けがしてある様子はない…。

(どういう事や…どこから電気が流れとるんや)

ユキヒロをちらりと見る。
左手で右手を握り締めている。痛むのだろう…。
早く手当しなければ…でも焦ってはダメだ。
どこかに盲点があるはずだ…どこかに…!

その時郵便受けが目に入った。
ものぐさなユキヒロはよくチラシが差し込まれたままで放置している。
それを毎回オレが来た時に来て整理していた…。
大阪に行く直前にも整理したから今何も入ってないのは不自然じゃないが…
他の部屋の郵便受けに目をやると、
全ての部屋に同じチラシが1枚だけ挟まっているのが見えた。
つまり大阪に行って帰って来る間に1枚はチラシが配られた…
なのにここにだけない…という事は!

オレはズボンのポケットからボールペンを出した。
念のため分解して芯やバネなどの通電性の物を全て取り外し、軸だけにする。
そしてそれで郵便受けのふたをそっと押した。

バチバチッ!

乾いた音を立てて蓋との間に何本かの稲妻が走る。
そして…

(見つけた……!)

郵便受けの口に導線が固定されていた。
ご丁寧にもハンダ付けだ。
そしてその線が郵便受けの中へと続いている。
何かがこの中で電気を発しているのは確かだった。
幸いここのドアノブはまわすタイプじゃなく、
取っ手を引くと開くようになっていた。

「ユキヒロ、大丈夫か。おまえんち、ゴム手袋あったよな」
「え…?え、…あ、うん…」
「よし、もうちょっと我慢してくれな」

そう言ってオレは周りを見渡す。絶縁体になるようなものは…
ユキヒロのカバンにペットボトルが入っていた。
中身を排水溝に流し、雑巾を絞るようにひねり、細くする。
それをドアに触れないよう注意しながら取っ手に通して引いた。
ドアが開いた!オレはユキヒロに

「まだそこに居れよ!」

とだけいい、中に入った。
ゴム手袋を探す。あった。幸いにも何枚も入っているやつだ。
念のため3枚重ねで付け、郵便受けに恐る恐る触れる。
電流は流れない。よし!蓋を開ける。
そこからゴロリと出てきたのはスタンガンだった。
その電極に導線がつながっている。

「クソ!誰がこんなもの…」

スイッチを固定しているグルグル巻きのテープを剥がす。
念のために電池も抜いた。これで電気は止まったはず…。
手袋を外し、プラスチックのキートップが付いた鍵をドアノブに近づける。

カチ…

静かに硬い音を立てて鍵がノブに触れた。
電流は無事に止まったらしい。
ドアを開けてユキヒロを招き入れる。
ユキヒロはまだどこか呆然としているようだった。

とりあえず警察に連絡をし、状況説明をした。
ゴム手袋をしていたおかげでオレの指紋は付いていない。
たぶん犯人も絶縁用の手袋をしてこの装置を仕込んだだろうから
証拠は出ないかもしれないが…
と頼りない一言を残して警官は帰っていった。
部屋は暑いのに薄ら寒い沈黙が流れた。
ユキヒロのかすれた声が聞こえてきた。

「泰三さん…」
「どうした…?まだ手が痛むか?」
「……泰三さん…」
「…大丈夫や、オレが守るから…」

包帯を巻いた右手に、そっと手を重ねた。
左手で肩を抱いた。
ユキヒロがしがみついてきた。カタカタと小さく震えている。
怖いに決まっている。何の前触れもなく生活が脅かされたんだ。

オレは体温がユキヒロに伝わるように、
ゆっくり、力を入れて背中を撫でた。
ユキヒロを守りたい。安心させたい。
でも、言葉が出てこなかった…。
抱きしめる事しかできない自分がもどかしかった。
この気持ちが電気のようにユキヒロに伝わればいいのに…。
でも言葉だけじゃない。きっと、伝わってるはずだ。

ユキヒロは…オレが、守る。
(´・ω・`)★☆(´・ω・`)★☆かいせつ★☆(´・ω・`)★☆(´・ω・`)

えー…というわけで、ない知恵絞って考えたトリックがこんな感じです。
たぶん不自然な事はない…よね?(;´ω`)
書くことはもうホントそのくらいですねこの回は。
あとはもう…何もないw