「おい、起きれ」
「そんな事より、から揚げの作りからが分からないんだけど…(σω=)。oO」
「ユキヒロー、朝やで、起きれ」
「んー…だからね、泰三さ…ハッ!Σ(゚Д゚;)」
「おはようございます」
「おはよ…オレ今なんか言ってなかった?」
「から揚げの作り方が分からんってなんやねん」
「……(;^ω^)エヘ」
「少しは体ラクになったか?」
「うん…もうすっかりよくなったみたい。ありがとね」
「そっか。それにしてもお前の家…汚いな」
「あ…えーと…」
「とりあえずまだ7時やし、部屋軽く片付けてメシでも食いに行こうや。
ゆうべからなんも食べてないから腹減ったのに
おまえんちの冷蔵庫水しか入ってへん」
「た、たまたま切らしてるだけなんだからっ!
いつもは松坂牛とか、名古屋コーチンとか、イベリコ豚とk…」

ペチ。

「アホな事言っとらんとホレ、早よ起き」
「はーい(´・ω・)」

あーなんか泰三さんと一緒に居るとホント和むな。
俺達は散らかってる服やカバンを片付けて
近所の定食屋さんに出かけた。

「オレは…アジの開き定食にするかな。ごはん大盛りで」
「ちょ、泰三さん決めるの早すぎ。
え、えっと、えっとオレは…えーと…だし巻き卵定食」
「お前優柔不断やなあ」
「だってどれもおいしそうなんだもん…」
「…ま、そんだけ食欲あるなら安心やな」

泰三さんは嬉しそうに目を細めた。
今更ながら、かっこいいなと再認識した。
自然と鼓動が早くなる。
やっぱりオレ…泰三さんに惹かれてる。
(告白…いつしようかな)
エッチより先に人を好きになるってはじめてかも。

しばらくして運ばれてきた定食を二人で食べた。

「お。美味いやん」
「でしょー。安いし美味しいから、ここ大好きなんだよ」
「それで冷蔵庫空っぽなんやなw」
「ゴホッ!ち、違うって…たまには…作るよ」
「ほー。何が得意なんや?」
「………シュークリーム…」
「は?」
「シュークリーム。あと、タルトとかマカロンとかプリンとか…」
「…全部お菓子やんけ」
「申し訳ございません。料理できません」
「素直でよろしい」
「でも、結構評判はいいよ」
「ほな、帰ったら何か作ってくれるか?」
「了解♪じゃあこのあと買い物行こうね」
「おう」

定食を食べ終えて会計を済ませた。
ダメだって言ったのに泰三さんがお金出してくれた。
お菓子作ってくれる分の材料代やからって。
何かそういう気遣いも嬉しかった。

二人でスーパーに向かって歩いていると
前から見慣れた人影が歩いてきた。
慶吾だった。
オレの足取りはどんどん重くなっていった。
あいつも俺達の事に気づいたらしい。
表情が固くなる。
俺達の距離はどんどん縮んでいく。
10m…5m…2m…

「ユキヒロ……」
「……慶吾…」
「…こいつか」

うっかり慶吾の名前を口にしてしまった。
ハッとして泰三さんを見上げる。
その表情は険しく、口の端が歪んでいる。
奥歯をかみ締めて怒りを堪えている様だ。
011

殴りかかったりしないだろうか。
すぐにでもこの場を離れた方がよさそうだ。

「…泰三さん、行くよ」
「……」

慶吾の横を通り過ぎる。
泰三さんは突き刺すような視線を慶吾に向けたまま
渋々といった感じでついてきた。

「ま、待ってくれ!」
後ろから慶吾の声が聞こえた。
「……何か用か?お前ら…
オレの連れにずいぶんと酷い事してくれたみたいやけど」
堪忍袋の緒が切れかけた様子の泰三さんが慶吾に歩み寄る。
その迫力に気圧されした慶吾は後ずさった。
「ちょ、泰三さん!泰三さんはちょっと下がってて」
「そんな事言うてもお前…」
「いいから。慶吾はオレに用があるんだろ?」
泰三さんを止めてオレは慶吾に近づく。
慶吾は言葉を捜しているようだった…
「………本当に…ごめん!」
「……」
「友達なのに、あんな事…
簡単に許して貰えないかもしれないけど
俺達、昨日約束したんだ。
ユキヒロに許してもらえるまで絶対に会わないって」
「………」
「あの時は即答できなかったけど、
オレは康太の事が本気で好きで…
自分の欲望に目がくらんで、ユキヒロの事考えてなかった…
今までもバレなかったんだし、大丈夫だって甘く考えてた」
「……なんか、ムカつく」
「……ごめんなさい……」
「なんかヤな感じ。謝ってくるの早すぎるよ。
もうしばらく俺にとって悪役のままで居てくれた方がよかったのに。
なんかザマミロって思えなくなっちゃったじゃん」
「……え…?」

少しだけ意地もあったけど
慶吾が心から謝ってるってのは
長年の付き合いですぐに分かった。

「まだ、許すか?って聞かれたら、悩む所だけど
昨日は顔も見たくないって思ってたけど
…まあお前らセットじゃなきゃ、個別になら会ってやってもいいよ。
でも完全に許したわけじゃないから、お前ら会うのまだ禁止な」
「……ユキヒロ…」
「つーかここで何してんの」
「イヤ、暇だし…散歩…
じゃなくて、えっと、また遊んでくれるって事?」
「康太と慶吾、別々になら、っていう条件付きだけどね。
そうだ。ヒマなんだったらうちの掃除してかない?」
「は?」
「まだ完全に片付いてないんだよ」
「なあ…ホンマにええんか?」
「いいよ。伊達に付き合い長くないから、
謝り方ヘタクソだけど気持ちが伝わっちゃってw
それにもうオレも昨日の事で吹っ切れちゃったしw」
「お前がええなら、まあ…ええけど」
「えっと…こちらは…?」
「ああ、泰三さん。康太に振られた日に知り合ったんだよ」
「どうも…橋口です」
「はじめまして…坂本です」
「言っとくけど泰三さんとは別に何もないからな」

泰三さんの顔をチラッと見ると少し寂しそうな目でこっちを見ていた。
オレはニヤリと目配せをすると言葉を続けた。

「……まー、オレの中ではもう彼氏同然の存在だけどな!w」
「……っ!!」
「ちょ、ユキヒロ、声が大きいよ!」
「いいじゃん、オレは自信持って言えるよ。泰三さんが大好きだって。
ねえ!泰三さん」
「……アホ!」

バシッ!

「イテッ!」
「あっ」
「なんだよー。泰三さんはオレの事嫌いなの?」
「ち、ちゃうわ。告白ってもっとムードがこう…なあ?」
「あら、泰三さん意外と乙女?w」
「アホか、朝っぱらから路上でするような事ちゃうやろ普通」
「好きな気持ちに朝も夜もなーい!」
「あのー…」
「お前なあ…」
「あー、照れちゃって!w」
「えーと……あの!」
「なんだよ!」
「あぁん!?」
「……えっと、おめでとう!」
「……ありがとう」
「…ああ、ありがとな」
「だから、さっさとこの場を離れよう。恥ずかしいよ」

気づいたら道行く人がチラチラとこちらを見ていた。
泰三さんがぐるりと見渡したらみんな慌てて目をそらしていた。

「…そうやな。日陰者達は退散するか」
「よし、じゃあとっとと買い物済ませて帰ろう」
「え、買い物って、またお菓子作り?今日は何!?」
「ほら、この慶吾の食いつき見た!?オレのお菓子は美味いんだよ」
「ホンマか、楽しみやなあ」

スーパーに向かうゲイが3人…
短髪2人に髭坊主のマッチョ、みんなが避けて通った。
全員オネエじゃないのがせめてもの救い…なのかな。
(´・ω・`)★☆(´・ω・`)★☆かいせつ★☆(´・ω・`)★☆(´・ω・`)

泰三とユキヒロの関係がついにはっきりと輪郭を見せる回ですね。
近所の定食屋は、実際のけいいち宅近所にある定食屋がモデルですが
だし巻き卵定食は…なかったかも。
それにしてもユキヒロの告白…想像しただけでドキドキします(*´ω`)
こんな感じの告白も、悪くないですねえ。