「オ、オイ・・・・・・」

突然の事に戸惑っているような、
そんな泰三さんの声が聞こえた。
きっとこんな風になるとは思わなかったんだ。
オレも自分で何でこんな事してるのか分からない。
でも今はただ……。

泰三さんがゆっくりと寝返りを打った。
目の前に泰三さんの顔がある。

「本当にええんか……?」

その目にはまだ悲しさが残っていた。

「オレ……泰三さんの悲しそうな顔、見たくないよ」
「ゴメンな…オレがずぼらなせいでお前の事、余計に傷つけた…」
「傷ついて、ないよ…ビックリして頭真っ白だったもん…」
「ホンマか…?」
「ホントだよ、ゲイがばれてた事で動揺して、
しかも泰三さんもゲイだって分かって、パニックで何も考えられなくて……
でもただ、泰三さんの寂しそうな背中見てるのが、辛かった」
「そうか…ありがとな」

そう言って泰三さんは少し微笑んだ。
テレビで見る様な格闘家なんかよりずっと厳つい顔なのに
微笑んだ目はすごく優しそうだった。
なんかそのギャップがおかしくてつい笑ってしまった。

「…何や?急にニヤニヤして」
「いや、メチャクチャ厳つい顔してるのに、
こんな優しそうな表情もするんだなって思って」
「そうか…?よく何もしてないのに怒っとると思われるけどな…」
「…確かに、初めて会った時は殺されるかと思ったw
でも、今の泰三さん、すげー優しそうな目してる…」
「…アホ、お前が可愛いからやろ」
「……ありがと、泰三さんもメチャクチャかっこいいよ」
「……フン、この世渡り上手がw」

そう言うと、泰三さんはオレの頭をまたグシャグシャと撫でた。
そしてその手つきは段々ゆっくりと優しくなっていく。
大きな掌が頬に触れる。額と額がくっつく。もう…これは…。

(キスする空気じゃん…)

007


泰三さんが誘ってきてオレがそれに答えた。
その時点で当然こうなる事は予測できたはずだった。
しかし、「今」の状況を把握するのに精一杯で
いざ「そういう空気」になるまで何も考えられなかった。

今まで何度もセックスはしてきたし、
遊びで、その場限りの相手とも何度もやった。
キスくらいいくらでもした。
でもこんな風に相手の事で頭が一杯になって
脳ミソの情報処理能力が足りなくなるような
そんな状況って…。
もしかしたら、初体験の時以来かも…。

背中に回した左手で背筋の溝をなぞってみる。
右手で首筋をなぞってみる。

(すげー筋肉…康太も鍛えてるって言ってたけどそんなの比じゃ…)

ハッとした。
頭の中で無意識に康太の名前が出た。
今さっきまで泰三さんの事で一杯だった頭の中身が
オセロの逆転劇のように康太の名前で埋め尽くされていく。

今まで付き合ったどの男より俺を理解しようとしてくれた。
家庭があるのに無理やり時間作ってまで会ってくれてた。
毎日毎日、よく飽きないなって呆れるほどメールくれた。
オレのつまらない話でバカみたいに笑ってくれた。
一生懸命オレに合わせようとしてくれてたのに、オレは…!

「…どうした?」
「……なんでも、ないよ」

泰三さんの声で現実に戻った。
そうだ、もうここに来て戻れない…。
頭が真っ白だったからとか言って誘いに乗っておいて
ここまで来たのにやっぱりやめるとか自分勝手すぎだよな。
ごめん…泰三さん、やっぱりオレはまだ…。

「…寝よか」
「え……?」

泰三さんは優しく微笑むと、オレの首に手を回して抱きしめた。
自然と泰三さんの胸に顔をうずめる格好になる。
でもなんで急に…?

「お前、また泣いてるやんけw」
「え…?あ……」

ごつい胸板に顔をうずめたせいで、
スエットの生地が涙で濡れてる事に気付いた。

「…ハハ…ごめん…」
「ええよ。今日はいっぱい泣き。
オレはお前が元気になるまでどこへも行かんからな。
ずっと支えたるから」
「……あ、あでぃがとう…」

涙声でうまく言えなかったが
泰三さんはうんうんと言いながら優しく頭を撫でてくれた。
オレは、早くこの痛みを克服して
泰三さんの気持ちに答えられる様になろうと思った。
まだこの先の事は何も分からないのに、なぜだか安心できた…。

(´・ω・`)★☆(´・ω・`)★☆かいせつ★☆(´・ω・`)★☆(´・ω・`)

原案ではここからセックスに行くんですけど
電影少女超えを狙うSSHとしてはやはりここは
安易にセックスさせるわけにはいかんのとじらしてみました。

ユキヒロの「・・・・・・あ、あでぃがとう・・・」は
PerfumeのGAME TOURのDVDコメンタリーにてのっちに
「あ〜ちゃんもかっこいいよ」と言われた時の
あ〜ちゃんの返事を引用しました。