Starry Sky

ゲイによるノンケ向けのゲイ恋愛小説です。性的表現は控えめですがなきにしもあらずなので苦手な方はご遠慮ください。

007. 恋愛の痛みと熱からの回復

「オ、オイ・・・・・・」

突然の事に戸惑っているような、
そんな泰三さんの声が聞こえた。
きっとこんな風になるとは思わなかったんだ。
オレも自分で何でこんな事してるのか分からない。
でも今はただ……。

泰三さんがゆっくりと寝返りを打った。
目の前に泰三さんの顔がある。

「本当にええんか……?」

その目にはまだ悲しさが残っていた。

「オレ……泰三さんの悲しそうな顔、見たくないよ」
「ゴメンな…オレがずぼらなせいでお前の事、余計に傷つけた…」
「傷ついて、ないよ…ビックリして頭真っ白だったもん…」
「ホンマか…?」
「ホントだよ、ゲイがばれてた事で動揺して、
しかも泰三さんもゲイだって分かって、パニックで何も考えられなくて……
でもただ、泰三さんの寂しそうな背中見てるのが、辛かった」
「そうか…ありがとな」

そう言って泰三さんは少し微笑んだ。
テレビで見る様な格闘家なんかよりずっと厳つい顔なのに
微笑んだ目はすごく優しそうだった。
なんかそのギャップがおかしくてつい笑ってしまった。

「…何や?急にニヤニヤして」
「いや、メチャクチャ厳つい顔してるのに、
こんな優しそうな表情もするんだなって思って」
「そうか…?よく何もしてないのに怒っとると思われるけどな…」
「…確かに、初めて会った時は殺されるかと思ったw
でも、今の泰三さん、すげー優しそうな目してる…」
「…アホ、お前が可愛いからやろ」
「……ありがと、泰三さんもメチャクチャかっこいいよ」
「……フン、この世渡り上手がw」

そう言うと、泰三さんはオレの頭をまたグシャグシャと撫でた。
そしてその手つきは段々ゆっくりと優しくなっていく。
大きな掌が頬に触れる。額と額がくっつく。もう…これは…。

(キスする空気じゃん…)

007


泰三さんが誘ってきてオレがそれに答えた。
その時点で当然こうなる事は予測できたはずだった。
しかし、「今」の状況を把握するのに精一杯で
いざ「そういう空気」になるまで何も考えられなかった。

今まで何度もセックスはしてきたし、
遊びで、その場限りの相手とも何度もやった。
キスくらいいくらでもした。
でもこんな風に相手の事で頭が一杯になって
脳ミソの情報処理能力が足りなくなるような
そんな状況って…。
もしかしたら、初体験の時以来かも…。

背中に回した左手で背筋の溝をなぞってみる。
右手で首筋をなぞってみる。

(すげー筋肉…康太も鍛えてるって言ってたけどそんなの比じゃ…)

ハッとした。
頭の中で無意識に康太の名前が出た。
今さっきまで泰三さんの事で一杯だった頭の中身が
オセロの逆転劇のように康太の名前で埋め尽くされていく。

今まで付き合ったどの男より俺を理解しようとしてくれた。
家庭があるのに無理やり時間作ってまで会ってくれてた。
毎日毎日、よく飽きないなって呆れるほどメールくれた。
オレのつまらない話でバカみたいに笑ってくれた。
一生懸命オレに合わせようとしてくれてたのに、オレは…!

「…どうした?」
「……なんでも、ないよ」

泰三さんの声で現実に戻った。
そうだ、もうここに来て戻れない…。
頭が真っ白だったからとか言って誘いに乗っておいて
ここまで来たのにやっぱりやめるとか自分勝手すぎだよな。
ごめん…泰三さん、やっぱりオレはまだ…。

「…寝よか」
「え……?」

泰三さんは優しく微笑むと、オレの首に手を回して抱きしめた。
自然と泰三さんの胸に顔をうずめる格好になる。
でもなんで急に…?

「お前、また泣いてるやんけw」
「え…?あ……」

ごつい胸板に顔をうずめたせいで、
スエットの生地が涙で濡れてる事に気付いた。

「…ハハ…ごめん…」
「ええよ。今日はいっぱい泣き。
オレはお前が元気になるまでどこへも行かんからな。
ずっと支えたるから」
「……あ、あでぃがとう…」

涙声でうまく言えなかったが
泰三さんはうんうんと言いながら優しく頭を撫でてくれた。
オレは、早くこの痛みを克服して
泰三さんの気持ちに答えられる様になろうと思った。
まだこの先の事は何も分からないのに、なぜだか安心できた…。

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006. 2人の航海

(言うてもーた・・・・・・)

心拍数が上がっていく。
汗が出てきた。
後悔した。
でももう乗りかかった船は出てしまった。

***

(それって、泰三さんも…?)

あまりに突然の告白に
頭が真っ白になった。
どうしよう、どうしよう、どうしよう…。
誘われたって事は
泰三さん的にはOKって事だけど…
オレも泰三さんの事…イケる…けど……
でも、やっぱり…

***

ユキヒロは背中を向けたまま動かない。

(もう寝たんか?早すぎやろ。さっきまで喋っとったのに…。
やっぱり振られたその日に別の男となんて
さすがに…なぁ……。
アホかオレは。あの人に似てるからって先走りしすぎやろ)

オレの一言が余計にユキヒロを傷つけたかもしれない。
何が「こいつの心の時間が動きだす手助けになれたら」だ。
独り善がりな思いやりで結局相手を傷つけたのか。
くそ!

***

背後から深いため息が聞こえた。
オレは…オレは…。
泰三さん、どんな気持ちで言ったんだろう。
ただオレとヤりたいだけなのかな。
恐る恐る後ろを振り返る。ゆっくりと…。
泰三さんは仰向けになって目を閉じている。

「泰三さん…オレ…」

そこまで言って言葉に詰まった。
自分でもどうしたら良いのか分からない。
泰三さんはゆっくりと目を開き、こちらを向いた。
その目にはさっきまでの鋭い眼光はなく
巨大な体躯が逆に情けなく見える程の悲しみに満ちていた。

「すまん…俺も、酔ってるみたいやし、気にせんといてくれ…」

そう言うと、オレの頭をまたクシャッと撫で、
今度は泰三さんがオレに背を向けた。
その後姿に胸が痛んだ。

***

(もう…ユキヒロとは会えんな。合わせる顔がない)

軽率だった。
自分勝手だった。
あの人に似てるから、それだけの事で
勝手に先走って傷口に塩塗って、えぐって
俺にはそんな事する権利なんてないのに。

(…やっぱりちゃんと謝らな)

もう一度ユキヒロの方に寝返りを打とうとしたその時…。

***

泰三さんの背中を見てものすごく胸が痛んだ。
頭の中はグチャグチャで全然考えがまとまらない。
気持ちに答える事で二人とも傷つくかもしれないけど
今はただ目の前の大きなはずの背中が
ションボリと小さく丸くなっている。
その様子が何より俺の胸を締め付けた。

(この人を悲しませたくない…)
006
いつしか頭の中はその気持ちで満たされた。
吸い寄せられるようにその背中に抱きついた。



「オレ…どうしたら良いか分かんないよ……
でも、泰三さんの寂しそうな背中、見てられないよ…」



自分の事なんてどうでもよかった。
後悔してもいい。ただただ目の前の寂しい巨人を放っておけなかった。
それだけの思いでオレは船を漕ぎ出した。続きを読む

005. 二つに分かれた自分

「お前…凄かったでw」
「は……?」
「まー強引に飲みに誘った俺が悪いんやけどな」
「えっ、オレ、何かしたんですか?」
「いや、ベロベロになってずっと泣いとっただけやで」
「え……」
「ほんで酒ひっくり返して潰れてもーたから、うちに連れて来たんやけど…」

と言うと泰三さんはしゃがんだ姿勢から胡坐をかき、
片肘をついてこっちを見つめた。
え……もしかして、康太の事言っちゃった?

「す、すいません……」
「ええよ、何か潰れそうやなって途中から分かっとったし、
無理やり飲みに連れて行った俺にも責任あるしな。
服は今洗濯しとるし、そんな状態で帰れんやろ。ホレ、横になれ」

泰三さんはオレの上半身を支えている腕が
うまく力を入れられずに震えているのを見て
まだ全然酒が抜けてないのを見抜いていたようだった。
そしてひざと肩の後ろを腕で持ち上げて
いわゆる「お姫様抱っこ」状態にされ、ベッドに改めて寝かされた。
確かにプロレスラーみたいな体型だけど
約80kgあるオレの体を軽々と持ち上げたのはやっぱり驚いた。
そして泰三さんはグシャグシャと俺の頭を撫でると
「ちょっと待っとけ」と言い残して部屋を出て行った。
それにしてもでっかいベッドだ。ダブルかな。
まあ持ち主がアレなら分かるような気がする。

「ホレ。飲め」

戻ってきた泰三さんがぽん、と投げて寄越したのは
スポーツドリンクのペットボトルだった。
オレはどうも、と言ってキャップをあけて二、三口飲んだ。

「水分しっかり取らんとなかなか酒は抜けんからな」
「すいません。ホントに…」
「謝らんでええって。なんだかんだ言って楽しかったしな。
ほな寝るか。ちょっと狭いけどごめんな」

そう言ってオレの隣に滑り込んできた。


005



(け…結構近いんですけど)

振られたその日だというのに
こんなガタイの男の人と一緒の布団で
しかも至近距離で寝るとなると
エロい事考えてしまう自分が顔を出そうとする。
心拍数が上がっていく。

(ダメだって!ノンケだったらどうするんだよ!)

自分の中の気持ちが2つに分かれていく。
本能に従う自分と、理性に従う自分。

(振られたその日に何考えてんだよオレは!くそ!)

焦って壁際に寝返りを打って
泰三さんとの距離をなるべく保とうとした。
そんなオレの葛藤をよそに泰三さんの深い息が聞こえる。
ノンケなんてそんなもんなんだよな。

(まだ、理性が勝ってる…けど、これじゃ寝れそうにないよ…。
くそ、そんなんならもっとイケてない顔と体しててくれよ…)
半泣きになってるオレの背中越しに泰三さんのつぶやく声が聞こえてきた。

「それにしても……ホンマに好きだったんやな、そいつの事。
よっぽどええ男だったんやろな」
「え……?」
「コウタ…って言うんやろ?そいつ」

オレは自分の耳を疑った。
まさか、ホントに康太の事言ってたなんて…。
気持ち悪いって思われてる?死ねばいいって思われてる?
からかわれたり、みんなに言いふらされたり
黙ってて欲しかったら、って脅されたりするのか…?
頭が真っ白になった。冷や汗が出てくる。血の気が引いていく。
心臓の音だけが加速していく。

「今日知り合ったばっかりやけど……」

遠くの方から泰三さんの低い声が聞こえた気がした。
ハッとして意識を背後に集中する。
ゆっくりと深呼吸をする音が聞こえた。

「オレじゃ……あかんかな?
…一回限りでもええから」

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004. 凍りついた時間(後編)

すぐ近くにあった全国チェーンの居酒屋に入った。
個室が開いてるということだったので案内してもらった。

「生大1つ。自分は?」
「えーと…じゃあ酎ハイレモン」
「食いもんは適当に頼むで」
「ハイ」

数分後、酒とお通しが運ばれてきた。

「よし、乾杯!」
「乾杯…」
「あー、うまいな。……で、何があったんや?よかったら聞くで」
「え、イヤぁ……」
「……、まあ、話したくなったら話したらええわ。とりあえず飲むで」
「そうですね」
「一週間頑張ったんやし週末くらいは飲まんとな。
おっと、自己紹介がまだやったな、オレは橋口泰三いうんや。ヨロシクな」
「名取ユキヒロです。よろしく」
「ユキヒロか。ええ名前やな。まだ若いよな。二十歳くらいか?」
「やだなあ、もう24ですよ。橋口さんはお幾つですか?」
「泰三でええよ。もうちょっとで32やわ。早いなあw」
「じゃあ、泰三さんで」
「おう」

そうこう言ってる間にどんどん料理が運ばれてきて
テーブルの上は瞬く間に皿で埋め尽くされた。
(ちょっと頼みすぎたか…、まあユキヒロもよう食いそうやし、こんなもんか)
そんな事を考えながら他愛のない会話とともに酒を流し込む。
3杯目のビールを受け取りながら飲み食いしてるユキヒロの顔をちらりと見る。
(それにしても…そっくりすぎるな。苗字が違うから兄弟って事はなさそうやけど)

「……ん、何?」
「イヤ、うまそうに食っとるなと思ってな。ちょっと酔ってきたか?w」
「うん、久しぶりに飲むからねーw」
「そうなんや、普段は飲まへんのか?」
「うん、あんまり強くないから」
「そうか…ムリヤリ連れてきて悪かったな」
「いいよ、今日は…ちょっと飲みたい気分だった…から……」

瞬く間に顔色が曇っていき、肩が震え始めた。

「お、おい…大丈夫か?」
「……う、うう……」
「何か、辛い事があったんやな…」
「何で…自分勝手すぎるよ……」

そういうとユキヒロは2杯目の酎ハイを飲み干し
ちょうど通りがかった店員を呼びつけた。

「鏡月ロックで!」
「お、おい」
「いいんです!あんなやつ、もう…もう、どうでも……うううう」
(………こりゃ介抱せんとダメっぽいな)

運ばれてきた焼酎を泣きながら飲みながら
ユキヒロは今日の出来事を話し始めた。

「一緒に居るときにベタベタするのがいやだったって。
我慢してたけど疲れたから別れようって。
そんなそぶり全く見せなかったのに!
直して欲しいなら言って欲しかったのに!
コウタのヤツひどすぎる……」

(コウタ?男の名前やん…って事は…やっぱりこいつも……)

しかし…そこまで言うとユキヒロはテーブルに突っ伏してピクリともしなくなった。
すっかり潰れたようだ。
料理はすっかり冷め切っていたがなんだかんだで9割方片付いていた。
とりあえず勿体無いので残りをかき込んでいたとき

ガシャーン!
ユキヒロの方から大きい音がした。
「!?…おいおい」

飲みかけのグラスを持ったまま横になってしまったようで服が酒まみれだった。
取り皿も一緒にテーブルから落ちていた。
幸い割れては居らず、怪我もしてないようだったが、
服には料理のシミがついてしまっている。
店員に侘びをし、ユキヒロの上着を脱がして背負い、
レジで会計を済ませて家路についた。
公園に差し掛かったときに背中で眠っていたユキヒロが目を覚ました。

004


「あ……ごめん重いよね。歩ける…」
「大丈夫や。ダテに鍛えてへんわ」
「でも暑い。服脱ぎたい」
「はあ?」
「もういやだこんな服恥ずかしくて着てられない!脱ぐ!」
「アホか、ほんだらオレが恥ずかしいわ」
「シンゴー!シンゴー!うわーん!」
「誰やねん!」
「うう……」

そのまままた眠ってしまった。全く誰やねんシンゴって。
(ふう、着いた…とりあえず着替えさせて寝かしとこ)
箪笥からスエットを取りだして無理やり着せてベッドに寝かせた。

「うう……コウタぁ……」

(泣くほど好きやったんやな…)
あの人にそっくりな男が、他の男に振られて泣いている。
かなり複雑な心境だった。あれからもう何年も経つというのに。
せめてこいつの心の時間が再び動きだす手助けになれたら……。

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003. 凍りついた時間(前編)

「まいどー」
「ご馳走さん!また来るわ」

仕事の帰り道、いつもの立ち飲み屋で一杯飲んだ。
明日は週末で仕事も休みだった。

(このまま帰って寝るんもなぁ…)

このところ週末は大体家で筋トレしたり
掃除と自炊と溜まった洗濯物の処理程度しかやってない。
当然時間は有り余るから、後はゴロゴロするか
たまにヤりたくなったらハッテン場*に行くくらいだが
最近はそれも面倒で性欲処理はもっぱら自家発電*だった。

(はぁ…どんだけダメ人間やねん俺。
景気付けにもう一件行きたいけど、一人で行くのもなんかなぁ)

そんな事をボンヤリと考えながら歩いていた時、
前から早足で歩いてきたやつが思いきりよそ見しながら突進してきた。

ドン!

思いっきりぶつかってそいつは尻餅をついた。
俺は倒れはしなかったが、
自分のプライベートの虚しさ加減に軽く凹んでたところに
ぶつかって来られたせいでイラッとしてしまい、つい怒鳴ってしまった。

「いっ……たいのぉ!この、ボケがぁ!!」

そう言ってぶつかってきたやつを見下ろした瞬間言葉を失った。

(龍次さん!?)

そいつの顔…特に目があの人にそっくりだった。
一瞬あの人が目の前にいるのかと錯覚するほどだった。
そいつは、泣いていた。

「オイ…大丈夫か?頭でも打ったか?」
「え…あ、すいません……」
「どっか痛むんか?立てるか?」

そいつの腕を取って立たせてやった。
首に掛けてた手拭いで顔をぬぐってやる。

「イテテテテテ!」
「我慢せぇ、こんな顔じゃせっかくの男前が台無しやろ」
「〜〜〜!」
「よし、これでええな」

頭をポンと軽くはたいてやる。
身長は俺より15センチほど低いか…?
まあ俺が194センチだから十分高いっちゃあ高いんだが。
そいつの顔を見ながら俺はある事を思いついた。
「どうもすいませんでした。じゃあこれで…」
立ち去ろうとするそいつの腕を掴んで言った。


003



「いい事思いついた。お前今から俺の飲みに付き合え」
「……は?」
「明日の予定は?」
「や、休みですけど……」
「OK決まり!ほな行くで!」

オレは強引にそいつを連れて居酒屋へ向かった。
あの人の目をしたこの男と、すぐに別れたくはなかった。続きを読む
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