Starry Sky

ゲイによるノンケ向けのゲイ恋愛小説です。性的表現は控えめですがなきにしもあらずなので苦手な方はご遠慮ください。

011. 少しの意地とキミよダーリン

「おい、起きれ」
「そんな事より、から揚げの作りからが分からないんだけど…(σω=)。oO」
「ユキヒロー、朝やで、起きれ」
「んー…だからね、泰三さ…ハッ!Σ(゚Д゚;)」
「おはようございます」
「おはよ…オレ今なんか言ってなかった?」
「から揚げの作り方が分からんってなんやねん」
「……(;^ω^)エヘ」
「少しは体ラクになったか?」
「うん…もうすっかりよくなったみたい。ありがとね」
「そっか。それにしてもお前の家…汚いな」
「あ…えーと…」
「とりあえずまだ7時やし、部屋軽く片付けてメシでも食いに行こうや。
ゆうべからなんも食べてないから腹減ったのに
おまえんちの冷蔵庫水しか入ってへん」
「た、たまたま切らしてるだけなんだからっ!
いつもは松坂牛とか、名古屋コーチンとか、イベリコ豚とk…」

ペチ。

「アホな事言っとらんとホレ、早よ起き」
「はーい(´・ω・)」

あーなんか泰三さんと一緒に居るとホント和むな。
俺達は散らかってる服やカバンを片付けて
近所の定食屋さんに出かけた。

「オレは…アジの開き定食にするかな。ごはん大盛りで」
「ちょ、泰三さん決めるの早すぎ。
え、えっと、えっとオレは…えーと…だし巻き卵定食」
「お前優柔不断やなあ」
「だってどれもおいしそうなんだもん…」
「…ま、そんだけ食欲あるなら安心やな」

泰三さんは嬉しそうに目を細めた。
今更ながら、かっこいいなと再認識した。
自然と鼓動が早くなる。
やっぱりオレ…泰三さんに惹かれてる。
(告白…いつしようかな)
エッチより先に人を好きになるってはじめてかも。

しばらくして運ばれてきた定食を二人で食べた。

「お。美味いやん」
「でしょー。安いし美味しいから、ここ大好きなんだよ」
「それで冷蔵庫空っぽなんやなw」
「ゴホッ!ち、違うって…たまには…作るよ」
「ほー。何が得意なんや?」
「………シュークリーム…」
「は?」
「シュークリーム。あと、タルトとかマカロンとかプリンとか…」
「…全部お菓子やんけ」
「申し訳ございません。料理できません」
「素直でよろしい」
「でも、結構評判はいいよ」
「ほな、帰ったら何か作ってくれるか?」
「了解♪じゃあこのあと買い物行こうね」
「おう」

定食を食べ終えて会計を済ませた。
ダメだって言ったのに泰三さんがお金出してくれた。
お菓子作ってくれる分の材料代やからって。
何かそういう気遣いも嬉しかった。

二人でスーパーに向かって歩いていると
前から見慣れた人影が歩いてきた。
慶吾だった。
オレの足取りはどんどん重くなっていった。
あいつも俺達の事に気づいたらしい。
表情が固くなる。
俺達の距離はどんどん縮んでいく。
10m…5m…2m…

「ユキヒロ……」
「……慶吾…」
「…こいつか」

うっかり慶吾の名前を口にしてしまった。
ハッとして泰三さんを見上げる。
その表情は険しく、口の端が歪んでいる。
奥歯をかみ締めて怒りを堪えている様だ。
011

殴りかかったりしないだろうか。
すぐにでもこの場を離れた方がよさそうだ。

「…泰三さん、行くよ」
「……」

慶吾の横を通り過ぎる。
泰三さんは突き刺すような視線を慶吾に向けたまま
渋々といった感じでついてきた。

「ま、待ってくれ!」
後ろから慶吾の声が聞こえた。
「……何か用か?お前ら…
オレの連れにずいぶんと酷い事してくれたみたいやけど」
堪忍袋の緒が切れかけた様子の泰三さんが慶吾に歩み寄る。
その迫力に気圧されした慶吾は後ずさった。
「ちょ、泰三さん!泰三さんはちょっと下がってて」
「そんな事言うてもお前…」
「いいから。慶吾はオレに用があるんだろ?」
泰三さんを止めてオレは慶吾に近づく。
慶吾は言葉を捜しているようだった…
「………本当に…ごめん!」
「……」
「友達なのに、あんな事…
簡単に許して貰えないかもしれないけど
俺達、昨日約束したんだ。
ユキヒロに許してもらえるまで絶対に会わないって」
「………」
「あの時は即答できなかったけど、
オレは康太の事が本気で好きで…
自分の欲望に目がくらんで、ユキヒロの事考えてなかった…
今までもバレなかったんだし、大丈夫だって甘く考えてた」
「……なんか、ムカつく」
「……ごめんなさい……」
「なんかヤな感じ。謝ってくるの早すぎるよ。
もうしばらく俺にとって悪役のままで居てくれた方がよかったのに。
なんかザマミロって思えなくなっちゃったじゃん」
「……え…?」

少しだけ意地もあったけど
慶吾が心から謝ってるってのは
長年の付き合いですぐに分かった。

「まだ、許すか?って聞かれたら、悩む所だけど
昨日は顔も見たくないって思ってたけど
…まあお前らセットじゃなきゃ、個別になら会ってやってもいいよ。
でも完全に許したわけじゃないから、お前ら会うのまだ禁止な」
「……ユキヒロ…」
「つーかここで何してんの」
「イヤ、暇だし…散歩…
じゃなくて、えっと、また遊んでくれるって事?」
「康太と慶吾、別々になら、っていう条件付きだけどね。
そうだ。ヒマなんだったらうちの掃除してかない?」
「は?」
「まだ完全に片付いてないんだよ」
「なあ…ホンマにええんか?」
「いいよ。伊達に付き合い長くないから、
謝り方ヘタクソだけど気持ちが伝わっちゃってw
それにもうオレも昨日の事で吹っ切れちゃったしw」
「お前がええなら、まあ…ええけど」
「えっと…こちらは…?」
「ああ、泰三さん。康太に振られた日に知り合ったんだよ」
「どうも…橋口です」
「はじめまして…坂本です」
「言っとくけど泰三さんとは別に何もないからな」

泰三さんの顔をチラッと見ると少し寂しそうな目でこっちを見ていた。
オレはニヤリと目配せをすると言葉を続けた。

「……まー、オレの中ではもう彼氏同然の存在だけどな!w」
「……っ!!」
「ちょ、ユキヒロ、声が大きいよ!」
「いいじゃん、オレは自信持って言えるよ。泰三さんが大好きだって。
ねえ!泰三さん」
「……アホ!」

バシッ!

「イテッ!」
「あっ」
「なんだよー。泰三さんはオレの事嫌いなの?」
「ち、ちゃうわ。告白ってもっとムードがこう…なあ?」
「あら、泰三さん意外と乙女?w」
「アホか、朝っぱらから路上でするような事ちゃうやろ普通」
「好きな気持ちに朝も夜もなーい!」
「あのー…」
「お前なあ…」
「あー、照れちゃって!w」
「えーと……あの!」
「なんだよ!」
「あぁん!?」
「……えっと、おめでとう!」
「……ありがとう」
「…ああ、ありがとな」
「だから、さっさとこの場を離れよう。恥ずかしいよ」

気づいたら道行く人がチラチラとこちらを見ていた。
泰三さんがぐるりと見渡したらみんな慌てて目をそらしていた。

「…そうやな。日陰者達は退散するか」
「よし、じゃあとっとと買い物済ませて帰ろう」
「え、買い物って、またお菓子作り?今日は何!?」
「ほら、この慶吾の食いつき見た!?オレのお菓子は美味いんだよ」
「ホンマか、楽しみやなあ」

スーパーに向かうゲイが3人…
短髪2人に髭坊主のマッチョ、みんなが避けて通った。
全員オネエじゃないのがせめてもの救い…なのかな。続きを読む

010. GAME

「名取ユキヒロか…ユキヒロ…ユキヒロ…ひひひひひ」

カーテンで力をなくした太陽の光を
銀色の刃が鈍く反射している。
きれいだなあ。

「ユキヒロは、どう思う?うひひ」

壁にかけてあるパネルめがけて思い切り投げつける。
刃はユキヒロの股間に突き刺さった。

「おお。痛そうだなあああああアハははははハアハあはああ」

その様子を見てオレは股間が熱くなるのを感じた。
たまんねーな…。でもまだ早い。
オレは5メ*を持って新宿のハッテン場に向かった。
前回は3日前だったか。その時もユキヒロに似たやつを探して掘った。
そいつはバリウケ*だったからつまらなかったな。途中で萎えて捨ててきた。
やっぱり嫌がるタチをやるのが一番だ。ユキヒロに似てればサイコーだ。
今日の獲物は…。

(みーつけたぁあw)

本物よりちょっと細いが、かなりユキヒロに似てる。
ロッカーキーは左、タチだ。*
ヤツは通路で品定め中といった風情だった。
オレはわざとゆっくりやつの前を通りすぎる。
ヤツの視線がオレの体を追ってきた。よし。
オレも視線を絡ませながら2〜3歩通り過ぎ、ゆっくり振り返る。
ニヤリと笑う。やつはゆっくり近づいてきてオレの胸板を触る。

「すげー体っすね…ウケですか?」
「どっちでもいいぜ。お前は?」
「バリタチ*ですよ」

オレは嬉しくて笑いそうになるのを必死で我慢した。
こいつを犯せる。ユキヒロに似たバリタチを。

手っ取り早く近くの布団に転がり込んだ俺達は
ひとしきり絡み合った。
そして枕元にあったポーチから5メを取り出すと
ゆっくりそいつのケツに仕込んだ。
ヤツは俺がタチろうとしてると勘違いして手を払う。

「指入れるだけだから…な」

と言ってカプセルをさらに奥に押し込む。
胸がドキドキした。早く犯してぇ。
まるでプレゼントを目の前に焦らされてる気分だった。
でも我慢だ…まだ…効き始めるまでは。

しばらくするとやつの様子が変わり始めた。
ヤツも体の異変に気付いたのか、
オレの方を驚いた様子で見ている。

「効き始めたみたいだなあぁぁあw」
「な、何を…」
「たっぷり仕込んでやったぜ。ゲーム開始だ」
「ヒ…いや、だ……!!」
「イヒヒヒヒ、もっと嫌がれよおおおおぁぁぁぁああはははは」

顔は恐怖で震えている。
たまんねぇ……。
完全にキまってるみたいで逃げようとするが力が入らないようだ。
まあ、キまってなくても力でこいつに負ける気はしないがな。

(いよいよだ…)

オレは熱くなった股間をあてがった。
「や、やめてくれ…!」
「だぁーーーめぇえぇぇw うひひひいぃ」
「生*は…ダメだ…!!」
「ヒヒヒ、アガるぜ、お前の嫌がってる顔ぉおw」

右手でヤツの両手首を掴み、左手で足を持ち上げて
ガンガンに突き上げる。
大声出されたらどうしようかと思ったが
すっかり怯えきって声も出なくなっているようだ。
涙がこぼれている。たまんねえな。ユキヒロもこんな顔するかな。

「ユキヒロ…ユキヒロ…アハハハハハハハハハ!」

ユキヒロの名前を叫びながらオレは果てた。
そいつの事はもうどうでもよくなった。
シャワーを浴びて家に帰った。
ユキヒロのパネルに刺さったナイフを抜いて
テーブルの上にポイと投げた。
ナイフはテーブルを転がり写真立てにぶつかって止まった。
その中には、「あいつ」の写真が入っていた。

「龍次…今日もユキヒロに似たヤツ掘って来たぜw
バリタチでメチャクチャ嫌がってたなあ。
お前にも見せてやりたかったよw」

そのままベッドに寝転んだ。
目を閉じると今日の相手の泣き顔が目に浮かんだ。

「ヒヒ、ッヒヒヒヒ……」

また股間が熱くなってきた。

続きを読む

009. 灰色の雲と雲の間に

家に着いた時は頭の先から爪先までずぶ濡れだった。
カバンを放り出し、服も全部脱いでパンツのまま布団の上に倒れこんだ。

(………頭イテェ…)

頭の痛みで昨日久々に酒を飲んだ事を思い出した。
泰三さんとの事も。

(オレだって、似た様なもんじゃねーか…)

振られたその日に、酒のせいとはいえ
知らない男とセックスしようとしてた。
偉そうに人を責める資格なんてないのに
自棄になってハッテン場に行くより
断る事も出来たあの状況で誘いに乗る方が
よっぽどたちが悪いように思えた。

(……いっその事全部リセットできたらいいのにな)

何をどこからどこまでが全部なのか分からないけど
とにかく今の状況から逃げ出したかった。
自己嫌悪と捨てきれない憎悪を抱えたまま
いつしか俺は眠りについていた。



(……寒い……)

気づいた時には部屋は真っ暗だった。
関節が痛み、ものすごい寒気がした。
裸で濡れた体で、布団もかけずに寝たせいで
すっかり風邪を引いたみたいだった。
だるさで動きたくなかったが、冬物のフリースを出して着た。
布団に包まっていても歯がガチガチと鳴った。
水分を取らないと…。
ミネラルウォーターのボトルが何本かあったはずだ。
そう思って冷蔵庫を開ける。
とりあえず買い置きの薬を飲み、2リットル一気に飲み干した。

しばらく布団に包まっていたらチャイムの音が鳴った。
なんかの勧誘か…?無視していたがチャイムはしつこく鳴り続けた。
重い体を引きずって受話器を取る。

「はい……え?」

ディスプレイには泰三さんの顔が映っていた。
高円寺だとは言ったけど家の場所は大まかにしか言わなかったし
部屋番号もまだ教えてなかったのに、どうやって?

「オレや。開けてくれー」

状況がつかめないまま開錠ボタンを押す。
しばらくすると玄関のチャイムが鳴った。
玄関まで迎えに行く。

「よう♪忘れもんやで。お前普通ケータイとか忘れるか?現代人として…」
「………」
「おい、どうした…?」

泰三さんの顔、声、匂い…
涙が溢れてきた。思い切り抱きついた。
玄関先だというのにオレは声を上げて泣いた。
泰三さんは何も言わずに頭を撫でてくれた。
009

ようやく泣き止んだオレを布団に寝かし、
アイスノンやら水やらを準備してくれた。
オレは途切れ途切れに事の経緯を話した。
泰三さんは怒りを露わにして聞いた。

「はあ!?そいつの家どこや!」
「いいよ、オレだって振られたその日に泰三さんと…」
「アホか!そいつはお前と付き会っときながら他の男とヤッてたんやで!
お前が許してもオレが許されへん!しばき倒してくる!」
「お願いだから、やめてあげて。康太は家庭もあるから…」
「そんなこと言うても、お前…」
「慶吾も大事な友達だから、今はそりゃ、顔も見たくないけど…
でもだからって暴力で解決しちゃダメだよ…」
「でもなあ……」
「泰三さんには、悪者になって欲しくないから。お願い…」
「う……」

泰三さんはまだ腑に落ちないというような表情だったが
しばらくすると少し冷静になってきたようだった。

「そうやな…相手に怒りをぶつけるよりも、
お前が一秒でも早く元気になるように支えてやらなあかんよな。ゴメンな」
「うん、ありがとう。でも、とことん突き落とされて良かったかも。
なんかゆうべの康太への未練がすっかりなくなった感じ」
「そうか…、良かった…んかな?」
「うん。それに、泰三さんが居てくれるもん。
あ…、そういえばどうやってうちが分かったの?」
「ああ…謝ろうと思うててん。住所分からんかったし、
ケータイの番号とメアドしか連絡手段交換してなかったから
勝手にプロフィール見て、登録されてる住所を探したんよ。ゴメンな」
「そうだったんだ。ありがとね、わざわざ届けてくれて…。
でも、今日はそろそろ…」
「何でや?明日も休みやろ?月曜日ちゃんと出れるようにしっかり看病するで」
「だって、うつしたくないもん…」
「アホ、お前にやったら、インフルエンザでも何でも喜んでうつされたるわ」
「泰三さん…」
「やから…キス、しよ」
「……」
「オレが、全部忘れさしたるから…」



(泰三さん……)



「やっぱり、ダメー!w」
「はあ?何でやねん」
「だって泰三さんまで風邪引いたら
オレの事は誰が看病するの?泰三さんの事は?」
「うぐ…」
「だからはいちゃんとマスクして。
そこの引き出しに救急箱があるからその中。
オレの分も取ってよ」
「おいおい、いきなり人使いが荒くなったの(;´д`)」
「とにかく言ったからには今日明日できちんと治して貰いますから」
「しゃーないやつやなあ…」
「ちゃんと治してくれたらご褒美あげるからね♪」
「アホw」

気持ちはすっかり軽かった。
あんだけのショックを受けたからか、
いっぱい泣いたからか
康太の事はもう何とも思わなかった。
いや、泰三さんが居てくれたからだ。
泰三さんがオレの悲しみも、憎悪も
全部吸い取って浄化してくれたから。

心を覆っていた雲はいつの間にか晴れ
柔らかい光で満たされていた。続きを読む

008-SIDE B. 結局大切な宝物までなくした

≪〜♪≫

「あ、康太からだ。なんだろう」

台所で夕飯の準備をしていた時
リビングの方で康太からの指定着信音が鳴った。
もう2008年の曲だけどPerfumeのBaby cruising Loveを
康太専用の着信音にしていた。
サビの最後の歌詞がなんとなく2番手のオレにぴったりな気がしていたからだ。

件名:今日から、改めて宜しく
本文:さっき、ユキヒロと別れたよ。
    だから本気で付き合って欲しい。
    良かったら、これから会えないか?

「え……?」

正直、複雑な気分だった。ユキヒロは俺の親友だ。
あいつが康太を紹介してくれた時も
バカみたいに幸せそうな顔で、オレも自分の事の様に嬉しかった。
でも…何度か3人で会う内に、康太に惹かれている自分がいた。
少しずつオレは、幸せそうなユキヒロに対して
嫉妬の気持ちを感じ始めていた。

ある日3人で遊んだ日の夜中、インターホンが鳴った。
ドアを開けたら康太がいた。ケータイを忘れたと言った。
2人を送り出したのが終電ギリギリの時間だったから
もう終電は行ってしまっていた。
とりあえずお茶を出した。

「終電、もうないね」
「ああ。明日の始発で帰らないとな」
「とりあえずユキヒロにメールしなよ」

そう言って空のグラスを片付けに台所まで行った時
急に後ろから抱きしめられた。
008-2
「ここに泊まっちゃ…ダメかな」
「……いいよ……」

俺達はその日初めてセックスした。
ユキヒロに悪いと思いつつも
その背徳感が他の男とのセックスより興奮させた。
いつか三人でエロ話したとき、康太が冗談交じりに
ユキヒロのはでかいからウケ*の時痛いんだよって言った。
あいつは慌てて否定してたけど確かにでかいのは知ってた。
今オレの下で康太はエロい顔で気持ちいいって言ってるぞ。
フン、お前は一番かもしれないけど
二番手のオレの方が康太を喜ばせてるぞ。

康太を自分だけのものにできない悔しさ
ユキヒロへの嫉妬を全て康太への愛撫にぶつけた。
そして康太はユキヒロと会った日の夜は
必ずうちに泊まるようになった。
そして康太とセックスする時だけは、
ユキヒロに対して優越感を感じていた。

そんな二人が別れた…。
康太が俺と付き合いたいと言ってきた。
望んでいた展開だったけど…。

件名:ゴメン…
本文:嬉しいけど…ちょっと、急すぎる。一晩考えさせて。

わりとすぐ返信が来た。

件名:わかった
本文:明日休みだよな?なんか食いに行こう。10時くらいにそっちに行くよ。

了解とだけ返事をしてベッドに横たわる。
(オレが…康太の…彼氏に…?)
ドキドキした。
(ユキヒロ、ゴメン…)
それでも顔はにやけたままだった。

翌朝、チャイムの音で目が覚めた。
玄関を開けると康太がいた。

「今寝起きか?おはよう」
「おはよ…」

玄関先でキスした。

「返事、聞かせてくれよ」
「うん…好きだよ、康太」
「オレも…なあ、今日はオレがタチっていいか?」
「…いいよ…」

オレはすぐに準備をした。
これから俺達は始まるんだ。そう思うとわくわくした。
そしていよいよ康太がオレの中に…と思ったその時、
部屋のドアが勢いよく開いた。そこには…。

***

部屋には雨の音だけが響いていた。
俺達は結局、こうなる運命だったのか。
パチン、とコンドームをはずす音が聞こえた。

「ゴメンな、オレのせいで…」

先に口を開いたのは康太だった。

「いいんだよ、オレも、共犯者だから…」
「違う、オレが先にお前を誘惑したんだ。ケータイだって、わざと忘れた」
「オレ、康太の事が好きだよ…」
「オレだって慶吾の事が好きだ…」
「でも、ユキヒロの事、考えてなさ過ぎた」
「……そうだな」
「俺達、当分会わない方がいいね…」
「………ああ」
「ユキヒロに許してもらって、ユキヒロが元気になったら、その時また会おう」
「…そうだな。最初からそうするべきだったんだよな」
「うん…」
「…オレは無理かもしれないけど、お前は何があっても取り返せよ」
「康太も、絶対許してもらえるよ。二人でがんばろう」

玄関先で康太を送り出すとき、最後のキスをした。
いつかユキヒロに許してもらえる日までの別れのキスは
苦いタバコの味だった。続きを読む

008. 現実に打ちのめされ

泰三さんの家から自宅がある高円寺までは歩いても30分くらいだった。

(何だ、意外と近所だったんだ・・・)

そう思いながら自宅への道を歩く。
温かく乾いた風が吹いた。目を細める。あくびが出た。
あんな風に抱き合って寝たのは久しぶりだったから
夜中に何度も目が覚めてしまった。

目が覚めるたびに、泰三さんの胸の中だった。
少し見上げるとスヤスヤと寝息を立てている泰三さんの顔が見えた。
小説とか漫画だったらこんなワイルドな見た目のキャラは
イビキや歯軋りはもちろん、
酷い寝相なんて当たり前っていうイメージだけど
その寝方はまるで、女の子みたいで今思い出しても笑えてくる。
朝、トーストをいっしょに食べながらその話をしたら
無言で頭を叩かれたけど…顔真っ赤にしてたから恥ずかしかったんだろうな。
思い出し笑いをしながら歩いているとあっという間に家に着いた。

「あ…そうだ、これ返しに行かなきゃ」

部屋に入って目に付いたのはテーブルの上のPSPだった。
風邪を引いた時に、親友の慶吾から暇つぶしにと借りたものだった。
008

一旦下ろしたナイキのエナメルバッグにPSPを入れ、また肩にかける。
そしてキッチンで水を一杯飲んでから出かけた。
空が少し曇ってきたようだった。

「……康太?」

慶吾の家に向かっていると、前の方に見覚えのある後姿を見つけた。
髪型も、服も、カバンも、カバンについてるストラップも…。
何でこんなところに…?康太の家は多摩市にある。
オレと別れて、高円寺になんて用はなくなったはずなのに…。
昨日オレを呼び出した駅前の喫茶店でも
「当分ここに来る事もないだろうな…」って言ってたのに。
ダメだとは思いつつオレは康太の後ろを気付かれないようについていった。

(嘘だろ…?)

康太は迷う様子もなく、慶吾の家の方角に向かって歩いていく。
慶吾の家は一人暮らしにしては広く、ムダに物も揃っていたので
よく2人で行って、焼肉とかたこ焼きを作ったりゲームして遊んだりした。
康太が家の場所を知っていても不自然じゃない。

(何か、用事があるんだよな…)

雲行きはどんどん怪しくなっていく。
こんな安いドラマみたいな演出、要らないのに…。
出来れば通り過ぎてくれという願いも虚しく、
康太は慶吾のマンションに入っていった。

(しばらくしたら出てくるかな)

マンションの下でちょっと様子を見ることにした。
10分経った。風が冷たくなってきた…
20分経った。小雨がぱらついてきた…
30分経った。とうとう本降りになってきた…
痺れを切らしてオレは慶吾の部屋の前に立った。

インターホンのボタンに指をかける。
押したらいけないような気がした。
鼓動がどんどん早くなっていく。
もし…いや…でも…!!

(どうしよう…やっぱりまた来ようかな…)

結局ボタンを押す勇気もないまま
引き返そうとしたオレの耳に慶吾の声が微かに聞こえた。

『あぁ…康太ぁ…!』

その声に弾かれた様にオレはドアノブを引っ張った。
驚いたことに鍵はかかってなかった。
玄関から伸びた廊下、その先にあるリビングへのドア
歩いて数歩の距離なのに果てしなく遠く感じた。
そのドアを勢いよく開ける。

「慶吾…康太…」

目の前には見たくなかった光景が広がっていた。
ベッドの上で康太が慶吾に覆いかぶさっていた。
そして、二人とも裸だった。

「えっ…ユキヒロ…!?」
「慶吾…お前…」
「ユキヒロ…違うんだ、これは…」

「馴れ馴れしく呼ぶなよ!」

「ユキヒロ……」
「康太…慶吾の事が好きなのか…?」
「………」
「…慶吾は?」
「……」
「即答できないのかよ。遊びなのかよ!」
「……ユキヒロ…」
「今日で10回目だ…」
「何?」
「俺達がこうやって会うのは10回目だ」
「……じゃあ」
「ああ…お前に慶吾を紹介されてから、慶吾の事が気になり始めた」
「康太…もう、それ以上は…」
「お前と会った日、駅で別れた後また改札から出て
慶吾の家に泊まって翌朝始発で帰ってた」
「…………それで…?」
「お前に言った別れたい理由は嘘じゃない。
ただ、浮気を隠したのは必要以上に傷つけたくなかったからだ」
「ふ…ざ、けんなよ!
そんなの自分の優しさに酔いしれてるだけじゃねーか!
長続きさせたかったら直して欲しいって言えばいいだけの事なのに
浮気の罪悪感に負けて
オレの嫌な所を理由に切っただけじゃねーかよ!
自分のした事正当化してんじゃねーよ!」

悲しみが、悔しさが澱の様に足元に溜まっていった。
流れ続ける涙で視界は陽炎のように歪んでいた。
時間が、止まってしまったような気がした。
秒針の音が、嘘の事の様に感じた。
雨の音だけが、部屋の中に響いていた。
もう……おしまいだ。

「ユ、ユキヒロ……」
「PSP…返しに来たんだ…土足で入ってゴメン…」

それだけ言うとオレはPSPをテーブルの上に置き、慶吾の部屋を後にした。
雨は激しくなっていたが傘なんて持ってなかった。
オレは雨に打たれながら、トボトボと家へと向かった。

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