でも、学校に出た日もあの人に会える事を期待して
あのゲーセンでストIIを毎日やった。
「オイ、お前宮高の生徒やろ」
視線だけ上げる。
「なんや、今工か」
「なあ、ちょっと金貸してくれんか」
「財布落としてもーて、なあw」
「困った時はお互い様って言うやろ」
「…内ポケットからはみ出てるのは何や」
「こ、これは……なあ」
「まあ、その中身も、落としたっていう財布の中身も
どうせ空っぽなんやろ。ついでに頭の中身もか?」
「あぁん!?」
「なんやとコラ!」
「……ちょっとこっち来いや」
路地裏に連れて行かれてボコボコにされた。
当時は大して筋肉質でもなく喧嘩もそんなに強くなかった。
ただ、目つきの鋭さと既に185センチあった身長で
あまり絡まれる事がなかっただけだった。
(クソ、痛てぇな……!)
殴られながら、蹴られながら
それでも財布の入ったカバンは絶対に渡すまいと
胸に抱え込んで亀のように丸まっていた。
その時聞き覚えのある声が聞こえた。
「オイ、お前ら!何さらしとるんや!!」
「やべ!逃げるぞ!」
今工の生徒達は路地の反対側に逃げ去ってしまった。
「オイ!大丈夫か」
「……なんや、オッサンか」
「今の、今工の生徒やろ。お前、なんでやり返さへんのや」
「相手に怪我させたら暴行だか、障害で犯罪になるやろ」
「お前…」
「ハァ、オッサンの言う通りにしたらこのザマや…」
「何があった?」
「別に…金たかられたから、断っただけ」
「そうか…何も取られんかったか?大丈夫か?」
「大丈夫なわけないやろ。顔も服もドロドロやし…あちこち怪我したわ」
「とりあえず送ったるから、一緒に来い」
「…イヤや」
「何?」
「イヤや、学校フケて遊んどったのバレるやん」
「…そっか、じゃあ…とりあえずうちすぐそこやから、そこで休むか」
そいつの家は意外にも一戸建てだった。
「一戸建てか…」
「意外か?」
「生意気…」
「一応公務員やからなwホラ、上がれ」
しかし中は雑然と言うか…どっちかというと汚かった。
「…これで嫁が居る言うたらオッサン、離婚した方がええで」
「はははw心配するな、花の独身貴族やw」
「これが貴族の家か…?」
「まあまあ、硬い事言うな。男同士やろ。
よし、とりあえず泥落とさんとな。服、脱げ」
「え?」
「洗濯するから服、脱げ」
「え…イヤや」
「…しょうがないな。ホレ、タオル。そこが脱衣所。
一人やったら着替えられるやろ?シャワーして傷も洗った方がええで。
あとで着替え置いとくからな」
オレは一人脱衣所で服を脱ぎ、軽くシャワーを浴びた。
ぬるま湯にしても出来たばかりの傷はヒリヒリと染みた。
風呂から出たらスエットが置いてあった。
一応匂ってみたけど変な臭いはしなかった。
「おし、きれいになって出てきたな!」
そいつは満足げにオレを見て言った。
「消毒するで。こっち来い」
「ええよ、そんなん」
「ええから!ホラ、こっち。ここ座れ」
「……」
オレをソファに座らせるとオレの足元に胡坐をかき、
足、手、顔の傷をてきぱきと消毒してくれた。
「お前…オレの言った事、守ってくれたんやな」
「……別に。おっさんに手柄挙げるチャンスやりとうなかっただけや」
「まったく、素直じゃないのw」
「……でも…」
「うん?」
「助けてくれて、ありがとう…」
「ああ、いつでも助けてやるからな」
そう言うと、嬉しそうにこっちを見て微笑んだ。
胸が痛いほどドキドキして、顔が赤くなる。思わず目を逸らした。
オレ、この人にホレたんかな…?
「なあ…」
「何?」
「お前、立ってるんちゃう?」
「……!!」
気付かなかったが、無意識のうちに下半身に血が集まっていた。
しかもスエットだから勃起してるのが丸分かりだった。
一瞬で頭がグチャグチャになった。
「こ、これは…その…!」
「ええんやで、高校の頃は何もなくても立ったりするもんやw」
「ちが…そういうんじゃなくて……!」
「ん?」
今思えば完全に暴走してた。
「オレ、オッサ…龍次さんの事が……好きや!」
「……………」
龍次さんはきょとんとした目でこちらを見上げていた。
沈黙で我に返った。。汗が頬を伝って流れ落ちる。
恥ずかしい…けど、視線が外せない。
ご、誤魔化さないと…。
「な、なんてな!はははwビックリしたやろ」
どう考えても焦って取り繕おうとしてるようにしか見えない。
余計にテンパって何か言おうとするけど言葉が出てこない。
龍次さんはそんなオレの隣に黙ってゆっくり腰掛けると
肩を抱き寄せて頭を撫でてくれた。
「ありがとな…勇気出して言ってくれて」
「……………うん」
「これからずっとオレが守ったるからな」
「………うん……」
緊張の糸が切れたのか
体の力が抜けてしまった。
龍次さんの心臓の音がただ、耳に心地よかった。続きを読む