Starry Sky

ゲイによるノンケ向けのゲイ恋愛小説です。性的表現は控えめですがなきにしもあらずなので苦手な方はご遠慮ください。

021. 2人の思い出を重ねて

カランコロンカラ〜ン

喫茶店のドアをあけるとドアベルが鳴った。
店は落ち着いた雰囲気で、
カウンターの中には中年の女性がいた。
客は俺達だけみたいだった。

「いらっしゃい。あ、橋口君!おかえり。今年もよう来たね」
「ご無沙汰してます、ヨーコさん」
「アラ…!え…?こちらは…?」
「ハハハ、そっくりでしょう。新しい恋人のユキヒロです」
「はじめまして。名取ユキヒロといいます」
「イヤー!ビックリやわ。こんなそっくりな人が居るもんなんやね。
あ、和泉の妻で、ヨーコ言います。旦那が川口君の同僚やったんですわ」
「よろしくお願いします」
「あの、和泉さんは?」
「非番やから寝とるよ。ちょっと待っとってね、
飲み物出したら起こしてくるから。とりあえず座り。何にする?」

俺達はカウンターに座った。

「えっと、アイスコー…あ、冷コー1つw」
「冷コーてw今時あんまり聞かへんよw」
「レイコー?コーラの事?」
「冷たいコーヒーで、冷コー。もう死語やなw」
「なるほどー」
「で、お前何にすんねん」
「あ、決めてなかった!えっと、えっと……」
「ゆっくり決めたらええよ」
「んー…じゃあ、ミックスジュース」
「はい、ミックスジュースやね」
「プwww」
「なにさー」
「イヤイヤ、なんでもないw」

アイスコーヒーとミックスジュース、
ガラスのボウルに入れられたチョコレートが俺達の前に並んだ。
ヨーコさんは2階に和泉さんを起こしに行った。
しばらくして40代の男性がカウンターに入ってきた。
和泉さんか…現役の警官らしくガッチリした体型をしている。
顔は全然イケなかったけどw

「いらっしゃい。橋口君。こちらが名取君か…
ホンマやわ、川口にそっくりやな」
「はじめまして、名取ユキヒロです」
「そっくりすぎやからなんか変な感じやわw」
「ですよね、僕も写真を見たときビックリしましたよ」
「それじゃあ、夕飯の支度するからゆっくりしとってね。
今日はご馳走やからね♪あんた、店番お願いね」
「はいよ」

そういってヨーコさんは出かけていった。

「もうあれから12年なんやな」
「ええ、早いもんですわ」
「橋口君も、やっと幸せになれたみたいやし、今晩はお祝いやな」
「いいんですよ、そんないつも通りで」
「え、今晩って…?」
「橋口君、毎年お盆に川口君のお墓参りに来てくれるから
その時はうちに泊まってもらってるんよ。
元々ここは、橋口君と川口君の家やったからな」
「え、それじゃあここが…」
「そう、龍次さんとオレが昔住んでた家やねん」
「そうだったんだ…」

チョコレートを一つ食べる。
口の中に少しの苦味と甘さが広がる。

「2人はもうすぐ1年?」
「イヤイヤ、5月に知り合ったばっかりやから、まだ3ヶ月ですよ」
「えー、そんな付き合いたてなんや?
なんかそういう風に見えんかったわ。
てっきり去年来てくれてからすぐに知り合ったんかと思ったわ。
ほな、今一番幸せいっぱいで甘い甘ーい感じなんや(*´∀`)」
「ええ…wまあそうですねw」
「夜とかどんなんなん?(*゚∀゚)=3」
「コラ!興味ないやないですか!www」

夕飯は焼肉だった。和泉さんと泰三さんはビール
ヨーコさんとオレは酎ハイで乾杯した。
2年前に伊勢原の叔父さんが病気で亡くなってから
帰省というものに縁がなくなっていたオレにとって
まるで親戚の集まりのような食卓はなんだかすごく楽しかった。
一晩お世話になるお礼にと、台所を借りて
夕飯前に買ってきておいた材料でレアチーズケーキを作った。
和泉さんもヨーコさんも喜んでくれた。

「おやすみなさい」
「明日早いから、パンツ脱いだりせんとゆっくり寝るんやでーw」
「和泉さん!下品やから!w」
「あ、ダブルベッドだ。いいのかな、こんないい部屋使わせてもらって」
「昔からここだけは変わってないな…」
「え…?」
「オレが住んでた頃と全く一緒やねん。
多分オレのために使わんとそのままにしてくれてるんやと思う」
「そうなんだ…」
「改築してお店出すときもいちいち相談して来てくれて…
もう和泉さんの家なのにな。ホンマに…」
「泰三さんも龍次さんも、いい人に恵まれてたって事だね」
「そうやな。さ…寝る前に」
「ん?」
「和泉さんは何もするなって言ってたけど、キスくらいはええやろ?」
「…うん」

ベッドに横になると、ゆっくりと抱きしめられた。
そして、優しく頭を撫でてキスをしてくれた。

(泰三さんは龍次さんとこうして寝てたのかな)

昔と今を重ねて少し胸が苦しくなったけど
泰三さんの体温は心地よかった。続きを読む

020. おいしいレシピ

新大阪駅は人でごった返していた。
地下鉄に乗り換えて難波まで来た。

「ホンマはこっから乗り換えて恵比須町いうとこに行くんやけど
せっかくやし、街ん中歩きながらいくか」
「うん!」

難波から日本橋方面に途中まで地下道で行き、
エスカレーターで地上に出る。
東京より少し雑というか、ラフな感じの街並みと
すれ違いざまに聞こえる関西弁が新鮮だった。

日本橋から南に下っていく。
西の秋葉原といわれる電気店街をぬけると
前方に通天閣が見えてきた。

「もうすぐやで」
「もうダメ…泰三さん、ジュース買ってー(;´д`)」
「もうすぐって言っとるやないか。我慢せえ」
「ケチー(・ε・´)」
「ホラ、ここが浪速警察署。龍次さんのいた職場」
「ここかあ…」

信号が青になった。
交差点を渡って100mもしないところに煉瓦造りの建物があった。
泰三さんはその前で立ち止まった。

「ここが、オレの元職場な。
時間もちょうどええし、ここでなんか食うか?」
「え…?」
「ホレ、行くで。こんちわー」
「いらっしゃいま…え、橋口……くん?」
「深雪さんやないですか。ご無沙汰してます」
「えー!?ホンマに橋口君なん!?別人みたいやん!いやー
店長!店長!!ちょっとー!」
「なんや、騒がしいなあ。なんかあったんか?」
「橋口君!橋口君が来てくれたんよ!」
「ホンマか!?ゼビウスのスペシャルフラッグ並みにレアやん!」

厨房からドタドタと足音が近づいてきた。

「イヤあの、お気遣いなく…(^_^;)」
「おお!よう来たなあ、って、うーわ!すっかり見違えて!
ますますガラが悪くなったんとちゃうか?」
「店長も相変わらず口が悪いっスねえw」
「えっと…こちらは……?えらい川口君にそっくりやけど…」
「ああ…コイツ、新しい恋人です。そっくりでしょう」
「ど、どうも…名取です。泰三さんが以前お世話になっていたそうで…」
「イヤホンマそっくりやわ。ミラクルひかると宇多田ヒカルくらい似とるわ」
「深雪さん…微妙な例えはええからとりあえず座らせてくださいよw
コイツ干からびかけてるんですわw」
「ああ、そうやね。ゴメンゴメン。暑い中お疲れ様」

お店は1階は厨房とパンやケーキの販売で、
2階が食事できるようなつくりだった。
一番奥の窓際の席に通してもらい、冷たい水を貰った。

「えっと、じゃあBコース…」
「あっ!料理はこっちにまかしとき!」
「え、でも…」
「ええから、ええから。
せっかく久しぶりに来てくれたんやから言うて
店長も張り切ってるんよ」

深雪さんは嬉しそうに目を細めながら
他の客に聞こえないように小声で教えてくれた。

「じゃあ…お任せします」
「期待しといてな」

そう言うと深雪さんはウインクをして下に下りていった。
そして運ばれてきた料理は今まで食べた事がないような豪華なものだった。
テレビでしか見た事のないような高そうな料理が次々に運ばれてくる。
味も本当においしかった。

「でも…これすごく高いんじゃないのかなあ…?」
「ああ、さすがにオレもちょっと心配やわ…
まあ、お金は多めに持ってきたし、たぶん大丈夫やろ」
「んー…大丈夫、なのかなあ…」

***

「ちょっと、どういうことですか!」
「イヤイヤ橋口君、まあ落ち着いて」
「これが落ち着けますか!」
「泰三さんの言う通りです。僕も納得いきませんよ
何であんなにたくさん料理が出てきて2人で2,000円なんですか」
「イヤ、そのー…」
「ランチメニューはただでさえ粗利が低いのに…
絶対原価割れしてますよね、この値段」
「え、イ、イヤ…あの…」

鋭い指摘を受け、深雪さんは目を泳がせた。

「深雪さん、ホンマにオレら嬉しいですけど、
仕事はきっちりせなダメやと思うんです。
オレの経験からしてメニューに載せるとしたら
あれはランチ基準でも1人4〜5,000円の料理でしたよ。
やから、これ受け取ってください」
「あっ…あかんよ、橋口君」

そういいながら強引に一万円札を渡そうとする。
深雪さんは困ったように泰三さんの手を押し戻そうとする。

「橋口君…」
「あっ、店長」
「…店長がこの値段決めたんですか?」
「そうやで。橋口君、川口君亡くなってからホンマに落ち込んで
ホンマに…後を追うんちゃうかって心配になるくらいやった。
少しは元気になったけどそのあとすぐうちを辞めて、
そのまま東京に行ってもうたやろ…ずっと心配してたんやで。
今日、新しい恋人や言うて名取君連れてきてくれて
見違えるほど元気になった姿見せてくれて…
わしも深雪くんも、ホンマに嬉しかったんやで。
やから、今日の料理は元気な姿見せてくれたお礼なんや」
「店長…」
「わしらの気持ち、受け取ってくれるな?」

泰三さんは目を閉じ、溜息をついた。そして口を開いた。

「ダメです。サービスが露骨過ぎます。
他のお客さんからのクレームになりかねません。
やから、ちゃんとビジネスはビジネスとして割り切ってやってください」
「うぐ…そ、それやったら仕方ない…」
「分かってもらえたらいいんです。で、会計は1万円ですか?1万2千円ですか?」
「……名取君…こ、これを…(;´ω`)つ【写真】」

そう言って店長はポケットから何かの写真を取り出し、裏返して差し出してきた。

「…?なんすかこれ」
「橋口君がうちで働き始めた時の写真や…」
「……っ!!!!!!」

泰三さんが血相を変えて店長の手からその写真を奪おうとする。
店長はその手をヒラリとかわす。

「店長!何でそんな写真まだ持ってるんすか!!」
「ホホホ(・3・)あの頃の橋口君は今と比べ物にならんほどの…」
「うわー!わー!!!ユキヒロ!聞くなよ!」
「名取君…じゃあこっちを…は、橋口君の歓迎会の時の…(((;゚Д゚)))つ【写真】」
「深雪さんまで!!やめてください!!!」
「ホホホ(・3・)橋口君、今日の会計は一人1,000円やけど、ええかな?」
「分かりました!分かりましたから!!
2人ともお願いやから写真なおして*くださいよー!。゜゜(つ□`。)°゜。」
「泰三さん……(^_^;)」

あの泰三さんが泣きそうな顔で2人に懇願している…さすがだ。
…という訳で無事?店長の思惑通り食事代は一人1,000円になった。

「ご馳走様でした」
「ご…ご馳走様でした…(;´ω`)」
「名取君、橋口君をよろしくな。
橋口君、また遊びに来るんやで」
「ハイ、本当にありがとうございました」
「もう…写真処分しといてくださいよ…」

俺達は店長と深雪さんに挨拶をして店を後にした。

「はあ…疲れた…」
「もー。そんな恥ずかしがるような写真なの?」
「どんなんか話すのもおぞましいわ…」
「まあ、オレは今の泰三さんが好きだから
昔どんなんでも、全然気にしないよ」
「そ、そうか、ありがとうな」
「それにしてもおいしかったね」
「そうやろ?つーかメインの料理、オレが考えたレシピやった…」
「やっぱり?」
「え、やっぱりって?」
「イヤ、食材は食べたことがない様な高級なものだったけど
なんか味付けが…泰三さんの料理っぽかった」
「そうか…まあ、今のオレの料理の腕前は
あそこで磨かせてもらったんやもんな」
「それに、深雪さんも店長もいい人だった」
「……写真で元店員を脅すような人やけどな(;´ω`)」
「まだそんなこと言ってるー。ホントは泰三さんも好きなんでしょ?
だからあそこでお昼食べようって言ったんでしょ」
「まあな。深雪さんも店長も
オレがゲイやって知ってもそれまでと変わらず接してくれたしな…」
「あんなあったかい人のところで料理を勉強したから
きっと泰三さんの料理はおいしいんだね。また、来ようね。
…っていうか、次はどこに行くの?」
「もうすぐそこやで」

そう言って目線を前に向ける。
そこには小さな喫茶店があった。続きを読む

019. 桜咲く季節に離れ離れになっても

「動くな!!」

その声に目をやると、警察官が銃をこちらに向けていた。

「うひひい、殺せよw」
「来い!」
「あははははははは!!殺せ!殺せよ!!!」

男はもはや正常ではなかった。
笑いながら手足をばたつかせ、
警官に連行されていった。

「大丈夫か?」
「オレはいいから、龍次さんを早く!」
「大丈夫や、救急車がもうすぐ来る」

***

「龍次さん…龍次さん…」

オレは集中治療室のベッドに寝かされている
龍次さんの手を握り、名前を呼び続けた。
涙が次から次に流れ出して止まらなかった。
病室には心電図の音だけが響いていた。
かなりの量の出血があったらしく危険な状態だと聞かされた。
まるで世界の終わりを告げられたような気持ちだった。
「今夜が山だ」という医者の言葉が呪いの呪文のように聞こえた。
部屋の中は時間が止まっているようだった。

「橋口君…君も今日は休んだ方が…」
「イヤです…ずっとここに居らしてください」
「でも、君も…その、身体的にも…ダメージがあるし…」
「オレは大丈夫です…オレのせいで、龍次さんが…こんな目に…」
「……アホやな……」
「龍次さん!?」
「川口!大丈夫か!?」

龍次さんが薄く目を開けた。
こちらを見る。
急に心電図の音が乱れ出した。

「泰三…おお、和泉も…居ってくれたんか…」
「龍次さん!」
「川口!ムリするな!今先生呼んで来るからな!」

和泉さんは集中治療室から駆け出していった。
龍次さんは酸素マスクをはがすと、オレの頬を撫でた。

「…イヤ、オレはもう、あかん…みたいや
いいか…、オレとの事は早う思い…出に、して
ち…違うやつ、と…幸せに、なるんやで…
オレのせいで……ゴメンな…」
「イヤや!龍次さん、ずっと一緒やって、何度も何度も言ったやないか!!」
「……おう、死んでも…お前、の…ここに、ずっと…居らして…な」

そう言って震える手をオレの左胸に当てた。

「龍次さん…イヤや…まだ一杯、したい事あったのに…」
「…オレ、も…やで…でも……もう…
ええか、これだけ…は…忘れるな…
お前のせいやない…ええな…」
「……うん……」
「よし…ご褒美…家に…あるから
オレの……引き、出し……あかん…
最後に…キス、しよ……」

オレの首に手を回し、引き寄せようとする。
その力は消えそうな蝋燭の様に弱々しかった。

「龍次さん!」
「ホラ…早よう…」

最後のキスだった。

オレはそのまま警察病院に入院する事になった。
事情聴取にはある程度事情を知っている和泉さんが来てくれたおかげで
デリカシーのない質問を何度もされる事はなかった。
オレは辛さから逃れるように無感情になっていた。
何も考えたくなかった。

1週間後、腕の傷が大分落ち着いてきたので外出の許可が出た。
桜が咲き始めていた。今年は京都に花見に行こうって約束してたのに…。
胸の代わりに左腕の傷が少しズキズキした。
オレは家に帰り、龍次さんが言っていた「ご褒美」を探した。
机の引き出しを開けると、包装紙に包まれた箱が現れた。

『泰三へ。二十歳の誕生日おめでとう。大好きやで。龍次』

汚い文字で綴られたカードが添えられていた。
包装紙を破らないようにそっと開ける。
中から出てきたのは財布だった。
オレがいつか欲しいと言っていたものだった。

「こんなもん…こんなもん要らん!龍次さんを返せよ!!」

龍次さんの使ってた服、箸、茶碗、ペン、メモ、ケータイ、歯ブラシ、カバン、靴…
何もかもここにはあるのに、龍次さんはもう居ない。
二度と帰ってこない。どんなに手を伸ばしても、この手はもう届かない…。
主を失ったこの家の空気は重く、冷たく、オレの背中に圧し掛かってくる。
封じ込めていた感情が溢れ出し、オレは大声で泣いた。


黒澤は覚せい剤取締法違反と殺人容疑で起訴された。
動機は龍次さんへの復讐だった。
出所してから色々と龍次さんについて調べまわっていたらしい。
オレを襲ったのは龍次さんの大事なものを壊したかったからだと聞いた。
判決は実刑で懲役12年。はっきり言って不満だった。
しかし判決は変えられなかった。

オレは仕事をやめ、和泉さんに家の権利を譲り、逃げるように東京に来た。
自分の不甲斐なさで大事な人を亡くした後悔を
もう二度としたくないという思いで必死に体を鍛えた。
左腕の傷は治っても綺麗に消えなかった。その傷を見るたびに胸が痛んだ。
知り合いの彫り師に頼んで誤魔化すようにタトゥーを入れた。
龍次さんにどこか似ている人とはセックスしたいとさえ思わなかった。
あんなに気持ちよかったはずのウケがまったく出来なくなった。

あの事件から逃げようと、全部捨ててきたけど
この財布と龍次さんの写真だけは捨てられなかった。

***

「でも、あの日お前と出合った時にな…
オレの中でなんかが壊れたんよな。
確かに最初は、見た目やったけど…
お前の優しさと、可愛さにな、惚れてもーた」
「………」
「ま、12年前の話やからな。気にすんなよ」
「泰三さん…オレ…なんて、言ったらいいか……」
「だーから、昔話なんやて!w
まあこの財布と、写真は、そのー…形見と遺影みたいなもんやわ。
龍次さんもきっと、今のオレら見て安心してるんちゃうかな」
「……そう、かな…」
「そうやって。オレが龍次さんの立場でも同じ事考えるで。
これから死ぬ自分の事はひとしきり悲しんでくれたらそれでええ。
立ち直って幸せになって、時々でも思い出してくれたら…ってな」
「そんな!イヤだよ泰三さん死んじゃうのなんて!」
「ハハハ、例え話やって。オレは…そりゃいつかは死ぬかも知らんけど
そんな簡単に死んだりせーへんよ。伊達に鍛えてないからな」
「うん……」
「それに…ウケはまだちょっと怖いけど、お前やったら……ええで」
「エロオヤジw」
「お、懐かしいなwお前もこうなるんやでw」
「ならへん。絶対ならへんw」
「うわwユキヒロの関西弁変なの!超違和感だよwww」
「泰三さんの標準語、キモいwwwww」
「なんやて!この!」
「ひゃはははは!!やめて!わき腹だけは!!」

ドサッ。

「……好きやで」
「うん、オレも……」
「ねえ、もうすぐお盆休みだからさ…旅行しようよ」
「ええな。どこいこか」
「大阪」
「絶対決めてたやろ」
「えへ、バレた?」
「そやな、今年も龍次さんに挨拶に行くか。
…ようやく安心させてやれるかな」
「楽しみだね」
「ああ」続きを読む

018. 誰だっていつかは死んでしまうでしょ

一緒に住み始めてもうじき3年…。
俺達は相変わらず仲良く一緒に住んでいた。
お互いの話もいろいろした。
龍次さんは22歳の時に事故で家族を亡くしたそうだ。
オレは母子家庭で、母親は昔から男作って留守がちだった。
なんか状況は違うけど、ずっと一人だったのは似てるねと笑い合った。

そんなある日の事だった。
夕飯を食べ終わってくつろいでいるとケータイが鳴った。

「もしもし?……なんやって?すぐ行く!」
「仕事?」
「ああ、先月出所したばかりの犯人がまた悪さしてこの辺逃げとるらしい」
「気をつけてな…」

大阪でもあまり治安がよくない町だったので
こういうときは本当に不安だった。
龍次さんを送り出し、部屋の掃除をしていた時
玄関の外で何か音がしたような気がした。

(ん…?龍次さん帰ってきたかな)

そう思って玄関を覗いてみたが、誰もいなかった。
その時。

「お前がぁ……龍次の男かあぁ?」

背筋が凍るような声だった。
とっさに振り返ったが既にそいつはオレの目の前に居た。

ダン!

物凄い力で壁に叩きつけられる。
男の顔は逆光で分からないが、体格も、力も完全に相手が上だった。

「くっ…、だ、誰や!」
「うえへへ……ひ、み、つw」
「ふざ…けんな!この…!」
「うぐっ!」

男の鳩尾に膝蹴りを食らわせる。
家宅侵入の上に暴行未遂。このくらいなら正当防衛だろう。
男が怯んだ隙に抑え付けられていた両手を解こうとする。
左手が辛うじて解けた。
そのまま男の顔面を狙ってパンチを撃とうとした瞬間…

ザクッ。

「アハハアアァァw悪戯する手は、おしおきしなきゃなw」
「がぁぁぁぅぐっ」

今度は右手で気管を塞いできた。声が出せない。

「大声出すなぁよぉぉぉぉぉおwwwひひひw」
「…!!…!!!!」

左の二の腕が焼けるように痛む。
何かが、刺さっていた。

「龍次にはぁあ、世話になった、からなあぁああw
御礼をおぉをお、しなきゃなぁぁあwwうひひ」

髪を掴まれ、リビングに引きずられた。
そのまま床に抑え込まれる。
首を締めながら、左手に刺さっていた物をずるりと引き抜く。
痛みに叫ぼうにも、気管がふさがれて声が出ない。

「安心しなぁ。殺しはぁああぁ、しねぇよw
でも…楽しませてもらうがなぁぁぁああぁ」

そう言いながら目の前にかざしてきたのは…ナイフだった。
血がべっとりとついている。
服を切り裂かれ、窒息しない程度に喉を抑え付けながら
そいつはオレを犯した。
ニヤニヤと厭らしい笑みをこぼしながら…。
血に染まったナイフを見せつけながら…。
その目は、常人のそれではなかった。

オレは切り裂かれるような体の痛みと
心臓をひねり潰されるような心の痛みに耐えながら
ただ、涙を流し、その男を睨み付ける事しか出来なかった。

「黒澤あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

その怒鳴り声は龍次さんのものだった。
リビングの入口で息を切らしている。

「おwww主人公登場うううひひいひいいいw」
「お前……!よくも、泰三を!!!」
「動くなよ、こいつ、死ぬぜェェェええええw」
「くっ…!!」

「おまえもぉお、運がねぇなああぁ
こいつがぁ、オレを逮捕しなけりゃ…
お前があ、こいつと付き合ってなけりゃぁあ…
こんな目にいぃ、遭わなくてえ、済んだのになああぁw」

「お前…また薬に手出したんか!」

「ああはははあぁぁはははw
お前の事、恨んでるぜえぇw
こんなにキモチイイ物ぉををおw
取り締、まぁぁりいいいいやがってえェええええええ!!!!!!!」

それまでニヤニヤとしていた男の顔が
急に鬼のような形相に豹変したかと思うと
いきなりナイフを龍次さんに向かって投げつけた。

「うぐっ!!」

腹にナイフが深々と突き刺さり、
そこから真っ赤な血がボタボタと流れ出した。

「龍次さん!龍次さん!!クソッ!この野郎ぉぉぉぉぉ!!!」
「ひひひひひひいいいいムダムダムダムダムダぁぁぁぁwwwwww」

男は嬉しそうにまた腰を振り始めた。
痛みが体を貫くが、龍次さんを助けたい一心で力いっぱい抵抗した。
しかし力で完全に負けているオレの抵抗は虚しくあしらわれるだけだった。
どのくらいの時間が過ぎたのだろう…

「う、ぐ…うおおおおおお!!!」

龍次さんが叫んだ。見ると腹のナイフがずるずると引き抜かれていた。
シャツの切れ目からどくどくと真っ赤な血が流れ出している。
既にかなりの出血をしているようだった。
意識が朦朧としているのか、
焦点の定まらない目でフラフラとこちらに歩み寄ってくる。

「龍次さん!オレの事はいいから、救急車呼んで!!!」
「泰三…オレのせいで、ゴメンな…」

龍次さんはナイフを振り上げた。
しかし…そのまま意識を失って倒れてしまった。

「龍次さん!龍次さん!!うわああああああ!!」
「はははははははははは!悲しいか?悲しいか?
誰だって!いつか!死ぬんだよ!それが!今だっただけだ!
はははははははあはっははははははは!!!」

男は狂ったように笑いながら腰を振り続けた。
オレは龍次さんの名を呼びながら必死に手を伸ばした。
でも、どんなに手を伸ばしても
たった数十センチの距離は縮める事が出来なかった…。続きを読む

017. 2人だけの特等席

「いっ…!」
「ムリするなよ…」
「イヤや…」

オレは龍次さんの上に跨って
初めて一つになろうと悪戦苦闘していた。

「う……ぐぁっ!」
「お、おい…うわ、キツいな…大丈夫か…?」
「………す、すげー痛い…」
「抜くか…?」
「い、イヤや…この、ままずっと…」
「前に倒れてこれるか…?」

両膝を突き、ゆっくり上半身を前に倒していく。
龍次さんが優しく背中に手を回して抱きとめてくれた。

「ゆっくり深呼吸しぃ」

言われた通りに深呼吸する。
下腹部を覆っていた重い痛みが少しだけ和らいだ。
背中を撫でながら、キスしてくれた。
右手が股間を愛撫してくる。
痛みですっかり萎えていたのに、簡単に立ってしまった。

「ははは、さすが17歳やな」
「う、く…あっ…」
「イけそうか?いつでもイッてええで」
「あか…あかん、出そう……」
「よし、思いっきり出せ!」
「うああ、で、出る!ああああ!」

初めての合体はなんとも初々しいもんだった。

「ぎょうさん出たなw」
「はあ、はあ……」
「そろそろ、抜くか…?」
「イヤや、ずっと、こうしときたい…」
「そっか。ほな、萎えて自然に抜けるまでな」
「うん…龍次さん、好きやで」
「オレも好きやで」

告白してから1ヶ月目、6月のある週末の事だった。

***

それから10ヶ月…高校を卒業して、
オレは家を出て龍次さんの家に住まわせてもらい
新世界にあるフレンチレストランで働き始めた。
元々料理は好きだったが、
卒業したら一緒に住もうか、という龍次さんの誘いに
龍次さんのためにもっと旨い物を作りたい、と思い、
進路も決まってなかった事もあり、龍次さんの家の近くにあった
このレストランを就職先に選んだ。
新世界とはいえ一応本格フレンチのレストランで
レベルも高く、叱られる事も少なくなかったが
龍次さんのために、という一心でがんばった。

「ハイ、今日はミートローフ」
「おお!すごいな!めっちゃ旨そうやん(*゚∀゚)=3」
「ヘヘヘ、ハンバーグみたいなもんやけどな」
「イヤイヤ、お前の愛が込もっとるがなw」
「うわー、オッサンくさwww」
「お前もそのうちこうなるでw」
「ならへん。絶対ならへんwさ、食べよ!」
「おう、いただきます!」
「いただきます」
「お、旨い!」
「そりゃあ、オレの愛が込もっとるからな」
「お前もゆうてるやんw」
「オッサンと一緒に住んでるからうつったんやわ。責任とってなw」
「ええで。今日も一杯責任取ったるw」
「エロオヤジwww」

俺達はもくもくとメシを食った。
時々目が合うとニヤッと笑いあう。
あとは他愛もない会話を少しだけ。
オレはこの空気が好きだった。
少ない会話で通じ合えるこの時間が。
どんな高級レストランよりこの食卓での食事が幸せだった。
ここは、2人だけの特等席だと思った。

「ごちそうさま!あー旨かった!」
「ごちそうさまー。あ、龍次さん」

リビングのソファに行こうとしている隆二さんを呼び止める。

「ん?」
「口の上、ケチャップついとるで。鼻血みたいやんw」
「え?あ…w」
「オッサン臭い事ばっか言うくせにこういうとこは子供みたいやなw」
「うっさい!wあ、そうや、ちょいこっち来てみ」
「何?」
「ええから」

ソファに座った龍次さんはニヤニヤしながら手招きし、
左手でポケットをごそごそと探る。
かすかにチャリ、っと金属の触れる音がした。

「手、出してみ。左手」
「は?」

右手でオレの左手を掴む。
ポケットから出した左手がオレの左手の指に添えられた。

「ぴったりやな」
「これ……って…」
「今日で1年やろ。記念にな。ペアやで、ペアw」

そう言って自分の指にももうひとつの指輪をはめて見せる。

「龍次さん……」
「これからも、よろしくな」
「……うん!」

オレは龍次さんに抱きついた。
知らない間に涙がこぼれていた。続きを読む
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