Starry Sky

ゲイによるノンケ向けのゲイ恋愛小説です。性的表現は控えめですがなきにしもあらずなので苦手な方はご遠慮ください。

026. setting a trap

結局その日はユキヒロは精神的ショックから開放されず
オレはずっと一緒に居た。
ベッドで一緒に横になってユキヒロを抱きしめていた。

「大丈夫やから…オレが守るから」

同じような事しか言えない自分が不甲斐なかったが
ユキヒロはそのたびにうん、うん、と頷いてくれた。
夜が明けてコーヒーを淹れていたら電話が鳴った。
ユキヒロと二人でディスプレイを覗き込んだ。
番号が表示されている。
ユキヒロを見ると無言で首を振った。知らない番号らしい。
オレはゆっくり受話器を上げた。

「もしもし…」
「あーどうも、野方署の者ですが、名取さんのお宅?」
「ええ、そうです。何か分かったんですか?」
「いやね、あのスタンガンですがやはり指紋は出てません」

予想していたとはいえ、手掛かりがこれで一つ消えたわけだ。
オレは小さく溜息をつく。

「でもね、あのスタンガンねえ、連続放電時間がたったの8分なんですよ」
「8分!?たったの?」
「ええ、ですから目撃情報などもかなり絞り込めるんじゃないかと」
「ちょ、ちょっと待って貰えますか?」

オレは保留ボタンを押してユキヒロに言った。

「あのスタンガン、連続放電時間が8分しかなかったんやって」
「え、どう言う事?」
「要するにオレらがここに帰ってくる直前に仕掛けられたってことや。
誰かあやしい人間見かけんかったか?」
「んー…あ、そういえば」
「どうした?」
「なんか家のすぐ近くの角で、変な酔っ払いみたいな人にぶつかった。
すごいガタイしてて、目つき悪くて…」
「何?」
「フラフラしながら歩いていった…」

嫌な予感がした…。
オレは右手の人差し指で自分の右の首筋を指差した。

「なあ、そいつな…ここに…でっかい痣、なかったか?」
「え?泰三さんもその人に会ったの?」

オレは血液が凍りついたような
あるいは瞬間的に沸騰したような
捕らえようのない感覚に襲われた。

あの光景が蘇る。

あの日…12年前、オレを犯した男。
黒澤…。
あいつが…なぜ…ユキヒロを?
震える手で受話器をフックから外した。

「もしもし…」
「あーもしもし、何か心当たりでも?」
「黒澤です…」
「は?」
「12年前、浪速警察署の川口龍次巡査を殺害した、黒澤優です」
「えーと、随分唐突ですが…、何か根拠というか、証拠になるようなものは…」
「目撃証言だけですが…被害者が帰宅する直前に
黒澤と思われる人物とぶつかっています。
オレは12年前、川口巡査殺害の現場に居合わせた者ですが
その時の黒澤の特徴と、被害者の目撃した人物の特徴が一致したので…」

ユキヒロは驚きを隠せない様子でこちらを見た。
なぜまた黒澤が?ユキヒロの目はそう言っている様に見えた。

「なるほど…ちなみにその特徴というのは?」
「向かって左の首筋に大きな痣があったというものです」
「そうですか…ただ証拠としてはちょっと弱いですねえ…」
「そうかもしれませんが、黒澤の懲役期間は12年です。
数ヶ月前に出所しているはずです。調査してもらえませんか」
「そうですね、目撃証言は捜査の参考にさせていただきます。
今後もご協力をお願いするかと思いますがお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。
あ、あと…黒澤の件については浪速警察署の和泉警部が
当時取調べを含めて担当してくださっていたので
そちらに問い合わせていただければ詳しく分かるかと…」
「了解しました。そちらにも問い合わせてみます。それでは、失礼します」
「はい。よろしくお願いします」

オレは受話器を置いた。
ユキヒロが口を開いた。

「黒澤って…」
「あいつや…間違いない」
「泰三さん…オレ、どうしたら…」
「言ったやろ、オレが守るって」
「でも、相手は人殺してるんだよ!?嫌だよ!泰三さんも…」

オレはユキヒロの口を塞いで笑って見せた。

「オレは簡単に殺されへんよ」
「だって…」
「あんな穴のある仕掛けしてくるようなやつに負けへんって!
なんやねん連続放電時間8分て。一歩間違ったら意味なしやんw」

もちろんダメージを与えられなくても
郵便受けからスタンガンが出てくるだけでもショックだと思うが
そんな事を言っても意味がない。
恐怖から逃げるんじゃなく、打ち壊さないとダメだとは分かっていたが
必要以上に怖がらせる必要はない。

「な、だからメシでも食いに行こうや。
優秀なボディーガード様が居るから安心せえって!」
「様…かw」
「お、今笑ったな?この!」
「イ、イヤ!笑ってな…なんk…ヒャハハハハ!
ヤダ!ヤダ!わき腹わき腹!!」

8月の連休最終日。
窓の外から聞こえるクマゼミの声を二人の笑い声がかき消した。

025. JUMPER(後編)

シリコンのキーカバーが絶縁してるが
鍵が熱くなってきたようできな臭い臭いがしてきた。
オレは我に返って鍵をノブから離した。

「だ、大丈夫か!とにかくこれをどうにかせな…」

オレはドアを注意深く観察した。
マンションにありがちな表面が金属製のドアだ
中も金属かは知らないが、ノブや鍵穴も金属で出来ている。
鍵を開ける時に感電しなかったのはおそらく
ユキヒロが自宅の鍵にシリコン性のキーカバーをつけていたためで
たぶんこのドア全てが帯電してると考えた方がいいだろう。
という事は一見分からないところから電流を流す事も可能という事か。

少し背伸びをしてドアの上部分を覗く…何もない。
ドアの下もじっくりと見てみるが何もない。
ノブが付いている方にも、蝶番が付いている方にも
仕掛けがしてある様子はない…。

(どういう事や…どこから電気が流れとるんや)

ユキヒロをちらりと見る。
左手で右手を握り締めている。痛むのだろう…。
早く手当しなければ…でも焦ってはダメだ。
どこかに盲点があるはずだ…どこかに…!

その時郵便受けが目に入った。
ものぐさなユキヒロはよくチラシが差し込まれたままで放置している。
それを毎回オレが来た時に来て整理していた…。
大阪に行く直前にも整理したから今何も入ってないのは不自然じゃないが…
他の部屋の郵便受けに目をやると、
全ての部屋に同じチラシが1枚だけ挟まっているのが見えた。
つまり大阪に行って帰って来る間に1枚はチラシが配られた…
なのにここにだけない…という事は!

オレはズボンのポケットからボールペンを出した。
念のため分解して芯やバネなどの通電性の物を全て取り外し、軸だけにする。
そしてそれで郵便受けのふたをそっと押した。

バチバチッ!

乾いた音を立てて蓋との間に何本かの稲妻が走る。
そして…

(見つけた……!)

郵便受けの口に導線が固定されていた。
ご丁寧にもハンダ付けだ。
そしてその線が郵便受けの中へと続いている。
何かがこの中で電気を発しているのは確かだった。
幸いここのドアノブはまわすタイプじゃなく、
取っ手を引くと開くようになっていた。

「ユキヒロ、大丈夫か。おまえんち、ゴム手袋あったよな」
「え…?え、…あ、うん…」
「よし、もうちょっと我慢してくれな」

そう言ってオレは周りを見渡す。絶縁体になるようなものは…
ユキヒロのカバンにペットボトルが入っていた。
中身を排水溝に流し、雑巾を絞るようにひねり、細くする。
それをドアに触れないよう注意しながら取っ手に通して引いた。
ドアが開いた!オレはユキヒロに

「まだそこに居れよ!」

とだけいい、中に入った。
ゴム手袋を探す。あった。幸いにも何枚も入っているやつだ。
念のため3枚重ねで付け、郵便受けに恐る恐る触れる。
電流は流れない。よし!蓋を開ける。
そこからゴロリと出てきたのはスタンガンだった。
その電極に導線がつながっている。

「クソ!誰がこんなもの…」

スイッチを固定しているグルグル巻きのテープを剥がす。
念のために電池も抜いた。これで電気は止まったはず…。
手袋を外し、プラスチックのキートップが付いた鍵をドアノブに近づける。

カチ…

静かに硬い音を立てて鍵がノブに触れた。
電流は無事に止まったらしい。
ドアを開けてユキヒロを招き入れる。
ユキヒロはまだどこか呆然としているようだった。

とりあえず警察に連絡をし、状況説明をした。
ゴム手袋をしていたおかげでオレの指紋は付いていない。
たぶん犯人も絶縁用の手袋をしてこの装置を仕込んだだろうから
証拠は出ないかもしれないが…
と頼りない一言を残して警官は帰っていった。
部屋は暑いのに薄ら寒い沈黙が流れた。
ユキヒロのかすれた声が聞こえてきた。

「泰三さん…」
「どうした…?まだ手が痛むか?」
「……泰三さん…」
「…大丈夫や、オレが守るから…」

包帯を巻いた右手に、そっと手を重ねた。
左手で肩を抱いた。
ユキヒロがしがみついてきた。カタカタと小さく震えている。
怖いに決まっている。何の前触れもなく生活が脅かされたんだ。

オレは体温がユキヒロに伝わるように、
ゆっくり、力を入れて背中を撫でた。
ユキヒロを守りたい。安心させたい。
でも、言葉が出てこなかった…。
抱きしめる事しかできない自分がもどかしかった。
この気持ちが電気のようにユキヒロに伝わればいいのに…。
でも言葉だけじゃない。きっと、伝わってるはずだ。

ユキヒロは…オレが、守る。続きを読む

024. JUMPER(前編)

俺達はそれから少しイチャイチャして北欧館をあとにした。

時間は15時を回ったところだが、堂山の外れにあるゲイバーが
カフェタイムとして営業しているらしいというので行ってみることにした。

「こんちわ」
「いらっしゃーい。あ!たー君?」
「トッシー久しぶり!」
「えー久しぶりぃ!すごいマッチョになったじゃない!」
「そらがんばって鍛えとるからw こいつ、恋人のユキヒロ」
「どうも…」
「えー、昔の龍ちゃんにそっくりじゃない!カワイー♪
 トシヤです、よろしくー」
「とりあえずー…アイスティーにしようかな」
「あ、オレも」
「りょーかい♪おきゃん*、アイスティー2つね」
「はーい」

カウンターの中に居たもう一人の店員が
グラスにアイスティーを注いで持ってきてくれた。
坊主に顎髭で厳ついけど物腰の柔らかい
いわゆるイカニモ系*の店員だった。

「はじめまして〜、おきゃんてぃーです♪」
「あ、はじめまして…ユキヒロです」
「どうも、泰三です」
「今日はヒマなんでゆっくりしてってくださいね。あ、今日も、かなw」
「あんたケツの穴布団針で縫うわよ」
「ちょw シャレならんwww 泰三さん助けてwww」
「ダメ!泰三さんはオレの彼氏なんだもん!」
「ゴメンゴメン、冗談よ。
人の彼氏奪おうって思うほどアクティブじゃないわよw」
「あ、ごめんなさい、つい…」
「すぐムキになる辺りを見ると…2人はまだ付き合いたて?」
「3ヶ月やから…まあ、そうやね」
「それにしてももう…10年位だっけ?最後にここに来て」
「12年やね、オレが20歳の頃が最後やから」
「え?泰三さん未成年の頃から堂山来てたの?」
「そうよー。この子夜な夜ないろんなお店でいろんな事してたのよー」
「コラ!嘘つくなや!w龍次さんに連れられてここに来てたくらいやで」
「まあ、龍次さんお巡りさんだもんね」
「むしろ未成年に酒飲まそうとするようなダメ警官だったけど、
 まあイケメンだったよねー」
「トッシー1回、周年*のときかなんかでドロドロに酔っ払って
本気で龍次さんの事口説いてなかった?」
「マジ!?覚えてないわーw」
「オレ覚えてるで、まああん時まだガキやったし、
なんやねん龍次さんに絡みやがってこのクソガマ!って思っとってさあw」
「ひどーい」
「アハハ」

ゲイバーに来たのは本当に久々だったから面白かった。
帰りの新幹線の時間が近づいてきたので別れを告げて店を後にした。

***

「やっと池袋かあ…」
「ほな、オレは一回荷物置いてから来るから、またあとでな」
「うん。待ってるね」

そう言って泰三さんは降りていった。
オレは一人山手線に揺られて新宿まで。
新宿で中央本線に乗り換える。
高円寺について家の鍵を弄びながら夜道を歩く。
ちょっと喉が渇いたのでコンビニに寄った。
雑誌コーナーをふと見ると気になっていた雑誌があり
つい立ち読みしてしまった。

(ヤベ!泰三さん来るのに!)

慌ててお茶を買って飲みながら家路を急いだ。
自宅のマンションが近づいて気が緩んだのか
角を曲がった瞬間に人とぶつかった。

「あっ、スイマセン」
「おっとぉ、ごめんよぉお〜w」
(うわ、でっかい痣だな…火傷かな)

左の首筋に大きな痣があるその人は
酔っ払いみたいな感じでヘラヘラしながら歩き去って行った。
(すげー体格だったな…泰三さんレベルだった)
そんな事を考えながら玄関のロックを外した。

「お!ちょうどよかった!」
「あ、泰三さん」
「お前寄り道したやろ」
「ゴメン、ちょっと気になる雑誌があったからつい…」
「しゃーないなーもう。よし、荷物持ったるから早よ行くで」

そう言ってオレのカバンをひょいと抱えるとエレベーターを呼んだ。
自宅のあるフロアまでついて鍵を開け、ドアノブを握った。

バチィ!

「あっ!!!」
痛みに思わず悲鳴が上がる。
「なんやねん、静電気か?大袈裟やな…って、オイ!大丈夫か?」

ドアノブに触れた部分の皮膚が真っ赤に腫れ上がっていた。
火傷したみたいになっている。

「……」

泰三さんはオレの手から鍵を取り、
少しずつノブに近づけた。

バチバチッ!

青白い電流が鍵とノブの間に小さな稲妻を作り出した。
ストロボのように明滅し、時に蛇のようにうねる稲妻…。

「なんやこれ……」

オレは何も言えず、ただ青白い光を見つめるだけだった…。続きを読む

023. あの日の思い出

ユニットバスに篭って準備を始める。

(勢いで言ったものの…ちゃんとできるんやろか)

少し不安もあったが
龍次さんの時はまったくの未経験から
気持ちいいと感じるようにまでなれたんだから
きっと大丈夫だと自分に言い聞かせた。

正直まだあの時の事があって怖い気持ちもある。
だからと言っていつまでもユキヒロにばっかり
ウケをやってもらうわけにはいかないと思った。
あいつはタチリバなんだから、
タチりたいという気持ちは絶対あるはずだ。
オレがその気持ちを満たしてやらないと…。
お互いバニラ*で満足するほどウブじゃないし。

準備が終わった。いよいよだ…。

***

「く…うぅ…」
「ねえ、やっぱりやめようよ…指でもすごいきつかったのに…」
「だ、大丈夫、や…」

と言ったものの、12年ぶりだ。
龍次さんとの初めての時を思い出すような痛さだった。
体の力の抜き方は分かっていたつもりだったが
やっぱり「あの時」の事が無意識に緊張させるのか、
手が震えてなかなかうまくいかない。

「よいしょ…」
「どう、した……?」
「リラックス、して…」

上半身を起こした格好でユキヒロはキスをしてくれた。
右手で体を支えながら、左手で頭を撫でてくれた。

(あぁ、なんか落ち着…)

「ぐぁっ!っつー…」
「だ、大丈夫!?」
「リ、リラックスしたら…体の力、抜けて
 い、一気に入ってきた…ハハハ」
「一回抜く…?」
「イヤ…このまま…」

(なんか…あの時と似とるな…)

オレは龍次さんと始めて一つになった夜の事をふと思い出した。
そうだ、あの時と同じように…

「ゆっくり横になってみ…」
「うん…」

そのままオレも両膝を付いて上半身を倒し、
ユキヒロにしがみつく。
うなじに顔を埋め、香水の匂いを嗅ぐ。
滑らかな肌を撫でる。
少し顔を起こし、目を見つめる。

(大丈夫だ…あいつじゃない…怖くない…)

頭の中で何度も唱える。

「背中…さすってくれるか…」

ユキヒロはゆっくり背中をさすってくれた。
痛みが少しずつ引いていく。
背中をさすりながらニヤリと笑う。

「泰三さん…あの日の事思い出してるでしょ」

読まれてたか。

「ある意味2度目の初体験やからな…」

痛みは大分なくなった。
ユキヒロの目を見ていると不思議に怖さもなくなっていた。
少しずつ動き出す。忘れていたあの衝動がよみがえる。

「あ…、気持ち…よくなってきた…かも…」
「オレも、気持ちいいよ…」

嬉しかった。
ただ、一つになれる事が。
この先の事は…どうなるか、よく分からないけど
今こうしていられる事が幸せだった。
恐怖は、もう消え去っていた…。

***

「はー。久々にウケやったわあ…」
「トコロテンしなかったねえ(・ω・`)」
「元々そういう体質やからなー」
「でもなんか嬉しかった」
「ん?」
「これでタチでもウケでも一つになれたもん」
「ゴメンな、今までずっとウケばっかりやらせて」
「いいよ、ウケはウケで気持ちよかったから」
「でも、やっぱり…過去と向き合う事から逃げてタチばっかりやってきて
ユキヒロもタチりたいやろうなって思った事もあったけど
やっぱり怖くて踏み切れんかった…
今日も正直…怖かったけど…ユキヒロやったからできたんや…
おかげでトラウマが克服できた…。ホンマにありがとうな」
「いいよ、そんなかしこまらなくてもw」
「…そうか?」
「うん、オレだって泰三さんががんばってウケしてくれて
オレの事ホントに好きでいてくれてるんだって再認識できたもん」
「そうか」
「うん」
「これからはオレもウケできるから、タチりたい時は言ってな」
「了解ッス♪」

俺達はまた抱き合った。
ユキヒロの体温が幸せだった。続きを読む

022. 今からキミに会いに行くから

朝6時…
いつものように泰三さんの腕の中で目が覚めた。
いつもと違うのは、お互いの下半身がいつも以上に元気な事…。

「おはよう」
「おはよ」
「よう寝れたか?」
「うん。……あ、固いw」
「もー、こりゃしばらく起きられんわ」
「出す?」
「アホかw しりとりでもして落ち着かせるで」

エロい事を考えないようにとしりとりをすること5分…
ようやく落ち着いてきたので着替えて2階のリビングへ降りて行った。

「おはようございます」
「おはよう、よう寝れた?」
「はい、おかげさまで。和泉さんは…」
「かれこれ30分くらいトイレに篭ってるわ」
「相変わらず新聞ですかw」
「そうなんよ。もうそろそろ出てくると思うけど」

テーブルについてヨーコさんと話していると和泉さんが出てきた。

「おう、おはよう」
「おはようございます」
「おはようございます」
「ほな、メシ食ったらすぐ出るか」
「そうですね」

朝ごはんはご飯と味噌汁と納豆、焼き鮭だった。
関西人は納豆が嫌いだと思ってたけど
そういえば泰三さんも普通に食べてたな。
食事が終わると和泉さんと泰三さんと3人で出かけた。
龍次さんの眠っているお墓は近くだという事で歩いていった。

浄国寺というお寺に着いてバケツに水を汲む。
夜のうちに冷やされた水が気持ちよかった。
泰三さんが柄杓でお墓に水をかけ、オレが手でこすって汚れを落とす。

「うわ、冷たいw これ井戸水?おいしいのかなー」
「アホか。飲んだらダメに決まってるやろw」
「だって暑くなってきたんだもん」
「早よう川口に報告してやれやw」
「そうですね」

線香に火をつけ、お花を添える。
お墓の前に二人でしゃがみ、手を合わせた。

「龍次さん、やっとあの時の約束が果たせたわ。
こいつが新しい恋人やで。オレはもう大丈夫やから、安心してな」
「はじめまして。ユキヒロっていいます。
泰三さんのこと、幸せにします。見守っててくださいね」

「ひひひ。熱い熱いw」
「もう!和泉さん茶化さんといてくださいよw」
「ええやないかw
川口。こいつらのことちゃんと見といたれよ」

俺達の言葉に返事をするかのように
涼しい風がふわっと吹き抜けた。
八月の朝の空は青く透き通っていた。

一旦和泉さんの家に戻り、お礼を言って出発した。
大阪の観光をしたかったけど、
泰三さんに大阪は観光するとこやないと一蹴され
強引にお願いして歩いて行ける通天閣にだけ行った。
お昼は堂山町まで出て泰三さんのオススメの回転寿司屋に行った。
さすがに食い倒れの街と言われるだけあって安くておいしかった。

「さて…腹も膨れた事やし、軽く運動でもするか」
「運動?」
「昨日やってないやろ」
「……出たよw だから堂山だったんだw」
「イヤか?w」
「…大阪まで来て、っていう気もしなくもないけど…したいw」
「決まりやなw」

北欧館というサウナ*の個室を取って入った。
クーラーが効いていて気持ちがいい。
昨日キスしか出来なかった欲求不満を吐き出そうと
部屋に入った途端抱き合ってキスした。

「なあ…」

唇を離した泰三さんが恥ずかしそうに口を開く。
言いたい事は決まっているのに、恥ずかしくて言えないような
なんかそんな顔だった。

「どうしたの?」
「あの…な、えーと、今日は…そのー」

泰三さんの顔がどんどん赤くなっていく。
オレの首に回した手がモジモジと動いている。
早く続きを言って欲しかったが、オレは黙って続きの言葉を待った。

「オレが…う、ウケ…していいか?」
「……いいよ」

オレはニコッと笑って見せた。
こんな顔見た事ないけど、なんか、すげーかわいい。
泰三さんも嬉しそうな顔をして笑った。
そしてまた、キスをした。
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